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2023年6月13日 (火)

いま「個の確立」を「本のあとがき」に書き込んだ意味(私ではないが)

 私の先輩編集者・Kさんが、1970年代前後の出版物に、著者の了解を得て「個の確立」とあとがきに書き入れていた。
 先輩・Kさんは、私のアルバイト時代の「教養学部的ゼミの講師」のような人。
 1933年生まれで、早稲田大学大学院で沼田稲次郎さんの労働法ゼミで修業したあと、文京区労協の専従になり、後に労働旬報社の「労旬新書」を編集していた。
 Kさんからは労働問題・労働組合運動史の歴史のテキストとして、アメリカの社会主義者として著名だったレオ・ヒューバーマンが書いた一連の本――『資本主義経済の歩み』(上・下、岩波新書、1953年)、『アメリカ人民の歴史』(上・下、岩波新書1958年)、『労働組合入門』(青木新書、 全日本損害保険労働組合大阪地方協議会青年婦人部、1956)――の紹介とレクチャーを受けた。
 いつも仕事が終わった後の一杯の時に「労働法がめざす権利闘争の担い手は、自立した個人」と「人間の尊厳を実現することをめざし、個々人の連帯的団結体が労働組合」だと話してくれた。
 これらの文献の翻訳者は雪山慶正(専修大学教授、1912年10月6日~1974年5月6日、真継 伸彦著『光る声』、河出書房新社、1966年の主人公とのこと)さんで、もう一人の恩師だ。
 ある種の政党的・世代的観念に陥らないで「個の確立」を目指さなければならなかったのは、若い自分だったのかもしれない。仕事をしながら、サゼッスチョン("示唆"や"暗示"など、自分以外の誰かに何かを伝える意味が含まれている言葉)してくれたようだ。
 
 1980年代に「インフォ―マル組織による労働組合乗っ取り戦略」を追及したとき、以下のアンドルー・ゴードンさんが書いた文章のように、自己実現路線で同調する昇進昇格的人生がよくわかったのだ。
 〔4〕アンドルー・ゴードン著、二村一夫訳 『日本労使関係史~1853-2010』(元法政大学大原社会問題研究所所長・法政大学名誉教授)の「第11章 日本型労使関係のヘゲモニー」(434p-437p・PDF版)の部分を読んでほしい。(PDF版)
 
 インフォーマル組織は、「裏返しのレーニン主義」の母国であった、と書いてある。
 
 「インフォーマル・グループ」とは、共産党の組合内派閥集団である「細胞」をお手本にしてつくられた組合内組織であった。ただし経営側と対立する存在ではなく、会社に支援され会社と協調する集団であった。レーニン主義が政治的に目覚めた前衛分子によって大衆をリードし社会主義革命へと導く戦略であるなら、戦後日本は「鏡の国のアリス」ならぬ「鏡の国のレーニン主義」、 「裏返しのレーニン主義」の母国であった。インフォーマル・グループは、革命とは反対方向へ大衆を導くことを目指した前衛組織である。組合潰しだけがこのお話のすべてではない。インフォーマル・グループに属する者は、採用、昇進、昇給、あるいは仕事の配分、さらには作業長といった監督者への選抜に際し有利な扱いを受けたのである。他方で、戦闘的な活動家は差別的に処遇された。だが日本鋼管だけでなく他社でも、労使関係を安定させ生産性を向上させるには、こうした強硬路線だけでは不十分であった。 1950年代から70年代まで、企業経営者とその同盟者である協調的な労働組合内「会社派」は、従業員の支持獲得の上で大きな成果をあげた。そのための諸方策こそ、ある意味で「日本的労使関係」の核心をなしている。
 「団塊の世代」に属する私たちは「競争社会・能力主義社会」の牙城でつくられた「企業社会」の中心勢力だったはずだ。
 だから1975年当時、40%を超える組織率を作った先輩たちの力や総評などの労働組合陣営を崩壊させ、JC・同盟型の連合が大手をふるってのさばる状況をつくらせた責任がある。
 
 以下の文章も参考になる。
 
 
 ▽文春オンライン
日本が“同調しなければ生きていけない社会”になっている問題について、牧野 知弘 によるストーリー • 1 時間前

 

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