映画『狼をさがして』を観て、「松下竜一 その仕事」を読んだ。
韓国の女性監督(キム・ミレ監督)が描いた『狼をさがして』(1974年8月30日、東京・丸の内の三菱重工本社ビルで時限爆弾が爆発した)を渋谷駅近くで4月上旬に観てから、松下竜一(ドキュメント作家、1937年2月15日 - 2004年6月17日)が書いた本を4冊読み続けた。
最初は、『狼煙を見よ 東アジア反日武装戦線“狼"部隊』(河出書房新社、1987年1月)、『怒りていう、逃亡にあらず』(河出書房新社、1993年12月)の2冊を読んだ。同時代に生きたものとして、「なぜ」という気持ちからだった。
本を読んだあと、それぞれの当事者、映画の主人公:大道寺将司は2017年5月に、泉水博は2020年3月に、作家の松下竜一は2004年6月、それぞれ亡くなっていることを知った。なんと歴史に挑んだ人生の終焉を知らない自分だった。
その後、「松下竜一 その仕事」(全巻解説 山口泉、河出書房新社)、全30冊が出版されており、そのうちの2冊:『ルイズ 父に貰いし名は』(講談社、 1982年1月)、『久さん伝 あるアナキストの生涯 』(講談社、 1983年7月)を読んだ。
前者はアナキスト・大杉栄と伊藤野枝の残した子どもの人生体験、後者は大正時代の「アナ・ボル論争」に登場した大杉の同行者だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%AB%E8%AB%96%E4%BA%89
松下竜一の最初の本・『豆腐屋の四季』(講談社、1969年4月)は、出版社のアルバイト中に出たことを知って、“無名の人も本になるんだ”と記憶して、後年、ドキュメント・ルポの本とは何かを学ぶために読んでいたが、その後、30冊もの本を書いていた作家だと、今知った(追加で『巻末の記』、河出書房新社、2002年3月)。
しかし、松下竜一が作家として、「アナキズムに生きた人生」を描いた真意はわかるような気がする。
出版業界では、「総合書」「文芸書」「人文・社会科学」「医学書」「実用書」「教科書」「児童書」と別れて、それぞれ仕事をしているが、多くの「隠れアナキスト人」の宝庫なのではないかと思う。
1960年代から出会った業界だが、「自己決定の世界」をそれぞれの分野で突き進んだ著者・編集者が多かった。
私の先輩の一人も、労働法・労働問題の編集者だったが、1960年代末ごろ、浅草・田原町駅近くに住んでいて「梁山泊」のような労働運動家集団が住むアパートでまじって、生活していた。そこに連れられて行って、アルコールをコップ酒で飲んだシーンを今でも思い出す。(以上、敬称略。出版年は、初版発行を探した)