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2020年5月 5日 (火)

寺間誠治さんが書いた労働運動における「戦略的陥没地帯」をどうするのか

 寺間誠治さん(2019年2月2日にご逝去。享年70歳) が亡くなって久しいが、ご本人とは「業種別職種別ユニオン運動」研究会で同席した者で、編集子は同時代を別の所で生きてきた。

 寺間さんの「労働組合運動への期待」について、過去に書いてきたものだが、全労連系やそれ以外の組合運動家にもこのようなテーマをどうしていくのか、考えていただきたく再UPした。

 

 ▽私が紹介した「全労連の研究」(2012.07.08)

http://e-kyodo.sakura.ne.jp/roudou/zenrouren.htm

 

 産業別労組づくりのビジョンを提示――全労連の現勢と組織拡大戦略(残念ながら元のデータが削除されて読めない)

 二つ目は、寺間誠治さん(全労連組織局長 寺間誠治・労働者教育協会副会長)の「この社会を変える展望新しい労働運動とナショナルセンターの役割」(第117 期基礎教室第11 回(最終)講義 <社会を変える力はどこにあるのか> 2010 年7 月3 日)。この当時の肩書で、現在は政策総合局長。

http://homepage3.nifty.com/roudou-gakkou/117-11terama_resume_data07.03.pdf

 

 冒頭に掲げられている3つの柱は、以下の通り。

 ① 労働組合こそ使用者と対等に渡り合えるツール。社会的連帯がユニオン運動を通じて実現している

 ② ナショナルセンターとは何か。 一国の労働者の労働条件の水準は、その力量に規定される

 ③ 情勢は激変。未来を拓くために、個人を尊重した労働運動の再構築へ

 講義録のレジュメだが、全労連がどのような分野に力を注いでいるかが分かる。

 第一に、「社会的正義の実現~非正規に向かうユニオン」と、「新しいユニオン運動前進の背景」を示している。

 ①製造大企業における違法派遣の急増と法的・社会的責任放棄に対する批判

 ②労働力流動化と賃金・労働条件決定システムの変化 

 ③企業別組合の閉鎖性への批判と社会的労働運動への支持と共感

 ④ローカルユニオンの自主性・多様性の魅力

 ⑤青年労働者の意識変化

 

 その次に、寺間さんが掲げている柱が大事だ。

 ②組織的空白地帯

 1.製造大企業構内の広大な非正規労働者(戦略的陥没地帯)

 2.流通・サービス産業(小売10.2、サービス4.6%)

 3.中小零細企業(99人以下1.1%)

 

 「戦略的陥没地帯」と書かれている、大企業製造業における「労働オルグ」の組織配置が、今後の全労連のゆくえ・未来の戦略を決定するのではないか。

 アメリカ映画ではないが、工場・大規模店舗の外から「女性オルグが組織化を行う」ルポルタージュが書かれる時代だ。

そのために、「合同労組の研究」を示しながら、以下のような「産別組織の紹介と改革方向」を示している。

 

 ▼日本型産別組合~産別交渉権を持つ単産

 全国港湾、海員組合、私鉄総連、プロ野球選手会、建交労(ダンプ、生コン)、UIゼンセン(NCCU)

 

 産別組織の改革方向

 1.産別労使関係機構の確立=産別団交と産別協約締結にむけた戦略構想

 2.産別ユニオン(個人加盟一般般労組)の確立=企業横断的機能の強化

 3.ローカルユニオンと産別ユニオンの地域的連帯強化

 →組織改革への模索:映演労連、生協労連、金融労連、全建総連…。

 ▼組織改革の戦略的方向、必要な検討課題

  1.理念:未組織の組織化は日本労働運動の改革

  2.運動論:地域運動と教育学習を通じた企業別組合の内部改革への努力

  3.組織論:地域ユニオンの構築と産別ユニオンによる企業別組合改革

 ▼おわりに~新自由主義改革ではなく新たな福祉国家へ

  新たな福祉国家へ~全労連「雇用の安定を求める研究会」発足

  憲法13条 「団結強制」ではなく、個人を尊重した運動の再構築へ

  連帯の絆に包まれた個人は、他人への攻撃(不正)を自己のものとして行動

 『若者よ、マルクスを読もう』(内田樹「共産党宣言」より)

 

 全労連における「産別組織」づくりでは、旧運輸一般、建設一般全日自労などの「産業別・地域別一般組織づくりの経験(失敗も含めて)」を再考してほしい。その周りに、金融や電機、食品、印刷、航空などの新しい「一般労組」づくりと全労協・連合の単組と「共同」する度量が欲しい。

 首都圏青年ユニオンを生みだした、公共一般労組などの経験も、身近にあるのではないだろうか。

【参考】寺間誠治さん「労働運動と社会的連帯のチカラ」(東京労働学校115 期基礎教室 第7 回講義(2009/4/25)レジュメ)

http://homepage3.nifty.com/roudou-gakkou/115-terama-resume4.25.pdf

  

  ▽追記(2005.05.05)

 この二つの原文をお持ちの方がいたら、下記にお寄せください。「現代労働組合研究会のページ」にUPしたいので。

  sin_ryo11731アットyahoo.co.jp(アットを@に変えて)

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