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2019年3月23日 (土)

日本航空で「勇気をもって闘った」――小倉寛太郎さんに続いた人物(土井清著)

  以下の文章は、「現代労働組合研究会のページ」《13/11/25+12/02》に書いたものだが、《沖電気・浅利さんのたたかいへの「柳(やな)さん」のコメント》(2019年2月26日 (火))で紹介した続きで読んでほしい。

 

   2冊目は『俺たちの翼――巨大企業と闘った労働者の勇気と団結』(土井清著、文芸社、20034月)

 本書は、日本航空に入社し、「長時間労働に反対し、職場の人間関係における対等性をもとめ、会社側の一方的で恣意的命令・仕事はずしなどとたたかい、みずからの人生と労働組合の意味を描いた本」である。

 土井さん(1935年生まれ)は高卒後、社会の矛盾に気がつき、人間の尊厳を目指した姿を「【『沈まぬ太陽』が話題になったとき、日航労組は結成五〇年を迎える】という題して、「私の生涯の中で、四〇年前に、不当配転で強いられた釧路の生活がなければ、この歳になって高度経済成長下の企業とはなんであったのか、という問題を真剣に考えることもなかったかも知れない。もちろん労使関係について、若いころから自分なりに考えたり、日航労組の仲間たちと議論も交わしてきた。しかし自分の半生を通じて、改めてこれらの問題について考えてみようという気持ちになったのは、釧路の辛い体験が心に焼きついていたからだ。定年になって職場を退いた後、私は組合活動の経験を生かして、賃金差別撤回闘争に関連した裁判や争議の支援を続けている。その中で私が常に耳にし、また常に自分に向かって眩いてきた言葉がある。

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 「企業とは一体なんだ? 人間の可能性を破壊していくところなのか?」

 「これはわれわれ高度経済成長の時代に生きた世代に共通した難問にほかならない。しかし、実際に自分たちが生きた時代がどういうものであったのかを把握するには、自分の体験を想起しながら答えを探っても、そう簡単にできることではない。抽象的な世界を具体化して理解することは、それほどたやすいことではない。まして戦後日本という時代背景が加わると、きわめて複雑な様相をはらんでくる。

 私がそんなもどかしさを感じているとき、日本航空を舞台にした山崎豊子さんの小説『沈まぬ太陽』の連載が『週刊新潮』で始まった。一九九五年一月のことである。企業戦士の左遷がひとつのテーマとなった作品だったので、私はまるで自分のことのようにこの小説をむさぼり読んだ。小説の記述の中に、四〇年前の日本航空と自分の姿を探そうとしたのだ」と綴っている。

 前書きでは、土井さんがおかれた位置(数多くの同時代に生きた労働者・サラリーマンの仲間)を次のように描いている。

 「日航労組が政界・財界の猛攻を受けた一九六〇年代から七〇年代にかけて、実は他の大企業でも同じことが起こっていた。具体的な名前を挙げるなら、東京電力、雪印乳業、日立製作所、明治乳業、石川島播磨、凸版印刷など。まず労働組合活動への 「インフォーマル」組織を使っての介入、組合の乗っ取り、それに屈しない者に対する貸金・昇格差別、解雇、それに配転などが労働者の上に襲いかかったのだ。これに抗して地道な反撃が開始された。そしてその闘いは現在まで続いているものもある。」

 本書の柱立ては、つぎのとおりである。

 目 次

 前書き

 第1章 わが心の釧路

 第2章 消えていった海岸線

 第3章 小倉執行部の輝き

 第4章 嵐の前夜

 第5章 隔離政策

 第6章 配転事件の全面勝利

 第7章 Nの謀略

 第8章 労働運動の攻勢

 第9章 賃金差別撤回闘争に勝利

 第10章 二人の経営者

 第11章 高木社長の膿罪

 終 章 高度経済成長の光と影…

 後書き

 土井さんは「本書『俺たちの翼』は、多くの飛行機好きの仲間が日本航空に入社し、真面目に働き、低い労働条件の向上のために立ち上がった仲間たちの闘いの物語です。しかし巨大企業はその労働者たちを分断し、差別し、隔離し、苛めつくしました。でも私たちはその攻撃に負けることなく、労働組合に結集して普通に、元気に生きてきました。」と書いて本書を締めている。

 編集子がびっくりしたのは、「第7章 Nの謀略」だ。巨大企業における労働スパイとしての謀略か! 映画のワン・シーみたいだ。

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