総評・全国金属はなぜ変わっていったのか――青木慧著『ニッポン偽装労連』(1989年、青木書店)
http://e-kyodo.sakura.ne.jp/roudou/sorezorenoroudou-4.htm#180530zenkokukinzoku
これまで本ブログで総評の民間単産はどのように「敗北してきたのか」を検討してきたが、「全国金属」については、未紹介だった。
青木慧さんの『ニッポン偽装労連』(1989年、青木書店)を再読したら、《たたかう労働組合つぶし 「民主化運動」》の中に、「佐竹全金委員長のもとで筆頭副委員長をつとめていた中里忠仁金属情報機器労組委員長」の聞き書きがあった。
全国金属の大手企業内組合が、JCや自動車関係の同盟労組に「丸め込められた」様子が語られている。
「全金には、大企業ではありませんけど、中小の鉄鋼も電機も自動車も造船もあるということですから、業種的にはJCとつながりが深い単産ですよね。他方、同盟の方も金属同盟というのがあって、同じような業種を持っているわけです。しかし、同盟の方にあまりアタックしないで、総評・全金の方に焦点を当てて、七八年ごろからいろいろと介入というか誘いをかけてきた。
それは最初、全金の中央本部というよりは、大手支部ですね。シチズン時計とかセイコー、横河電機とか山武ハネウエル、東京計器とか、中京地区の豊田自動織機とかね。全金の大手支部と目される、かかわりの深いところを、幹部をとおしてね、JCとの結び付きが急速に強まってきたんです。」
(中略)
「そういう大組織の幹部というのは、たたかうだけでは組織を守れないと。これは労使の対立とか対決でなくて、協調してやっていくべきだという思想が、だんだんとJCの影響が強まるにしたがって、全金の中枢部が、そうなってきた。それが、全金という一つの単産が、だんだん右傾化する、当初の一つの特徴だね。比較的に階級的であり、権利闘争を大事にしてきた単産がなぜ右傾化してきたのか、だいたいそういう経過ですよ。」
(中略)
「それまでは波風がたたなかったのが、それらの大手支部委員長あたりから、原案に対して修正を求めるようなことが出てくるわけですよ。
たたかいの内容を、文言上で非常に歪めてみたり、ストライキという文言をできるだけ削ってみたり、「統一闘争」という表現を削ってみたりね。資本や権力に対するたたかい方、それについての行動も弱める修正を求めるわけですね。それはJC路線に間違いないし、同盟方針にも近いやつなんですね。
そういうのが、平気で組織だって出てくるわけです。東京地本の大手支部委員長あたりが中心になって、中央本部に方針の修正を要求するようになったのです。そういう圧力をかけて方針を変えさせようとしたけども、当時の佐竹委員長もわれわれも、それには応じなかったわけですけど、そういう力が全金をじょじょに蝕んでいったということですね」
以上の文章を読んで、下からの池貝鉄工などの首切り、北辰電機・山武ハネウェルなどのインフォーマル組織等による攻撃、それに加えて大手支部内での「労使協調への陥落」などが相まって、「全国金属の変化」が生まれたようだ。
▽全国金属の歴史的紹介
http://e-kyodo.sakura.ne.jp/roudou/sorezorenoroudou-4.htm#zenkin1
●2019年08月05日:
「職場レベルの諸問題の処理方式(承前)――全国金属における関連政策の分析」(嶺 学 『社会労働研究』、法政大学社会学部、22(3・4), p63-125, 1976年03月)
●2014年07月01日:全国金属における闘いの歴史 書評:柳田勘次著『闘えなくなった企業別組合』(早川征一郎、『大原社会問題研究所雑誌』2009年1月号、No.603)
労働争議と単産の役割――清水明、第38回東京労働争議研究会
金属機械反合闘争の到達点と発展方向、石川武男、全日本金属情報機器労働組合(IMJU)副委員長、労働法律旬報、NO.1289、1992年6月10日
産業別個人加盟労組運動の経験――全金品川支部地域支部の事例、長谷川義和、大原社会問題研究所雑誌 / 法政大学大原社会問題研究所 編、NO.348、1987年11月
●2014年07月01日:『追悼・岡安政和』(PDF版 「追悼・岡安政和」編集委員会、1982年6月) (一部訂正:2014.07.02)
●2014年07月01日:『社会のしくみと労働組合(増補改訂版)』――金属労働者の教科書、
全国金属労働組合、1971 年9 月25 日第1 刷発行、1976 年2 月10 日増補改訂版第1 刷発行
▽
「日本中の労働組合を破壊した「インフォーマル組織とは何か」のページへより。
http://e-union.sakura.ne.jp/union/informal.html
。
〔6〕全国金属・金属機械反合におけるたたかい (2014.05.01更新)
[1] 『ねらわれた組合――インフォーマル組織とどう闘うか』(金属反合闘争委員会編・発行、1983年7月1日、初版1万部) 【原本募集中】
[2] 金属労働戦線におけるインフォーマル組織――[原題:「ねらわれた組合」からの脱出――インフォーマル組織とたたかう、大木兼次郎・金属機械反合インフォーマル対策委員会、賃金と社会保障 879号 1983-12-10 (PDF)
[3] 全金山武ハネウェルのたたかい――弁護士法人 けやき総合法律事務所のサイトより
http://www.keyakisougou-law.jp/affairs/entry-44.html
▽対抗的労働組合運動の模索もご参考にしてください――◇金属労働戦線の現代的課題を追求
http://e-kyodo.sakura.ne.jp/roudou/sorezorenoroudou-4.htm#jmiu1
労働組合運動の再生・強化と日本型産業別組合の可能性 小林宏康[3]、特集●労働運動の再生と産業別組織の課題、「労働総研クォータリー」、2015年夏号(2015年7月発行)(PDF版)
非正規・未組織労働者の組織化と産業別組合の強化―すべての労働者のための労働組合へ―、労働総研クォータリーNo.76・77、小林 宏康[2 ](PDF版)
全国金属―JMIUの産業別統一闘争―「日本型産業別組合の可能性」について―、小林宏康[1](PDF版)
結成20周年を機に、真の産業別労働組合へ――JMIUの20年の歩み
◆総評・中立労連内民間労組の「変化」を紹介してきたのでこれもご参考に。
▽鉄鋼労連
八幡製鉄所のインフォーマルグループ――インフォーマル組織物語Ⅷ
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-0d95.html
▽合化労連
化学産業における労働組合の旗を守った人たち[2016年2月 4日 (木) ]
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-834d.html
▽全造船(中立労連)
『あたりまえの労働組合へ』・全造船石川島――議論は続く。[2016年7月10日 (日)]
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-7f4c.html
『あたりまえの労働組合へ』(全造船石川島分会・佐藤芳夫著)が書いていたこと[2016年5月31日 (火)]
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-bc6f.html
長崎造船社研・左翼少数派労働運動の軌跡 [2015年10月 9日 (金)]
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-3925.html
« 《ジャパンビバレッジの闘い》が示していること | トップページ | “やなさん”(柳澤明朗さん・元労働旬報社社長)の現代ルポ論を紹介! »
「大企業・総評型労働組合はどうなったのか」カテゴリの記事
- 《「はたらく」(1979年~1987年)、――「指名解雇された沖電気の仲間を支援する会 ニュース」》をUPした。(2019.07.10)
- 「沖電気争議の記録(1978.11/21~1987.3/31)」のページをUP。(2019.06.10)
- 高卒青年労働者が担った「高度成長期」の「職場の主人公づくり」――日立労働者群(2019.03.23)
- 日本航空で「勇気をもって闘った」――小倉寛太郎さんに続いた人物(土井清著)(2019.03.23)
- 沖電気・浅利さんのたたかいへの「柳(やな)さん」(労働旬報社元社長)のコメント(2019.02.26)
この記事へのコメントは終了しました。
« 《ジャパンビバレッジの闘い》が示していること | トップページ | “やなさん”(柳澤明朗さん・元労働旬報社社長)の現代ルポ論を紹介! »
コメント