公務公共一般労組づくりと職種別労働組合運動の構築へ
以前、本ブログで以下のような紹介文を書いてきた。
▽14/02/27、小林雅之著――東京争議団運動のDNAたっぷりの労働組合組織づくりを描く――『上を向いて歩こう』(本の泉社、2008年7月)
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-a6ac.html
「現代労働組合研究会のページ――東京労働争議研究会のことなど」 http://e-kyodo.sakura.ne.jp/roudou/sorezorenoroudou-3.htm#kobayashi
その小林さんから、『私が歩んだ労働組合運動――品川・目黒の活動家の聞き取り報告 第三集』(同編集委員会刊行、目黒労協内[目黒区鷹番3の1の1 石田ビル302]、2017年11月1日発行)と『季刊 セオリスト』(2018年春号、010号、編集・発行 東京公務公共一般労働組合、2018年4月1日、〒170―0005、東京都豊島区南大塚2―33―10、500円)を寄贈された。
さっそく読んでみたが、前者は「青春とロマンの時代 品川地域運動を原点として」、編者まえがきでは“今回は、東京公務公共一般労組の現役役員の小林雅之さんの聞き取りと、市川平八さんを中心に地区労での活動の「まとめ」を作成しました。小林氏は、本文にもあるように品川の金属の職場でさまざまな経験を積み、東京争議団共闘の事務局長、都の非正規社員を組織する活動を進めています“と書かれている。
小林さんは、1960年代半ば以降の高度成長期に多数の労働組合活動家が登場した「黄金期」の一員で、カコストロボの「従業員組合」を変え、「女性工員が果敢にたたかった姿」を語り、品川労協の地域労働組合運動の影響を受け(発刊の意図)、日立資本の系列支配攻撃(乗っ取り)とたたかい、全国金属へも加盟し、「企業再建闘争」をたたかった。
この争議のなかで「東京争議団」運動の一員として、「ド根性路線から脱却して運動路線をつくり、自らの争議解決をめざし東京総行動方式の一員として」事務局長を担った。
後者の『季刊 セオリスト』は、“『私が歩んだ労働組合運動』編集委員会は、東京品川・目黒地域の(元)活動家への聞き取りをこれまで6人について行ない、報告集として3回発行されています。そのなかで公共一般現副委員長で公共一般創立以来のオルグでもある小林雅之氏に聞きとりした第三集(2017/11/1発行)から、公共一般創立に関わるお話について、今回セオリストに転載することになりました。その後セオリスト編集部から追補的な聞き取りもして、加筆修正しました。”と。
ほぼ、『私が歩んだ労働組合運動』の後半で展開されている流れ通りなのだが、最初に持ってきている話は、「協同組合か労働組合か」と中西五洲さんから「一緒にやらんか」と勧誘された葛藤が出ている。「ちょっと身近すぎて、そうだったのか」と編集子も思わざる得ない事実が描かれている。
「インタビュー 公共一般の組織と戦略構想はどのように準備されたのか――『季刊 セオリスト』」では、「ご本人が徹底した妨害に遭った」こと(労戦がらみの困った話)や公務員組合にはオルグという姿がいなかったこと、そして、自治体関連労組協議会の結成、都区一般(現・公共一般)の組織化、独立してまたたくまに2,000人の組織へ。
組織の神髄は、「徹底的な単一・個人加盟」とし、「独立組織」を志向し、「公務職場だけでなく民間職場まで」視野にいれた組織づくりをたたかい取ってきて、「公務公共一般」という組織になったこと。
今後の課題として、「職種別で市場横断的な組織を構築中」としている以下の点(少し長い)が、重要なポンインとではないか。
■職種別にも最低賃金闘争を追求中
いま保育ユニオンは500人いますが、公立園、民間園どこで働いても最低時給2,000円で働かせろと要求し、エキタスと一緒に毎年数回デモを実施し、自治体に向けて学校栄養士たちと一緒にストライキも打って闘っています。
現場の非正規保育士は、全都自治体当局と保育労働者に向けて膨大なアンケートをとり、最低時給2,000円の理論構築をしてきました。既に時給1,500円を越えた保育士がどんどん増えている状況下での闘いです。
昨年2,000円突破目指してストを打った板橋区の学校非常勤栄養士は時給1,500円を突破しました。
200以上ある分会には、保育士分会、栄養士分会、図書館司書分会、非常勤講師分会など、そもそも職種別にくくられた組織が多数存在しています。これを雇い主が知事や区長、市長だからということで行政縦割りにくくっていたのですが、ここには企業内運動の限界がみえている。非常勤職員という一くくりで当局は賃金を決めてしまうが、本来は職種・職能別に賃金を引き上げていかないとだめだと考えてきました。
そこで職種職能別に全都を横断的に組織編成していく取り組みをしてきました。すでに6つの職種別ユニオンがあり、2,200人がいます。これからの賃金闘争にこの職種別闘争が、ナショナルセンターそして産別闘争においても決定的な変革をもたらすだろうと展望しての、取り組みが始まっています。
さらに注目されている点は「青年ユニオン」が果たす役割、「労働協約の拡張適用をめざす」こと、「NPOづくりと労働者供給事業」、「地域活動の重視」を打ち出している。
編集子が、1978年の沖電気の大量指名解雇争議、1980年代初頭の雪印食品争議などのインフォーマル組織とのたたかい、日本航空などの民間第一組合の争議を見てきたものとして、「労働組合運動における組織化」をめざす話は、禁句だった、と思う。
70年代の争議を終えた「日本製紙」争議団のメンバーが、「労働問題研究所」を名乗り組織化をめざしたが、進路・成長への道筋は不可能な状況だった。
そのなかで、3000名を超える組織化を進めた、小林さんと「都職労統一派」(小林さんの命名)のご苦労は、全国の青年・女性たちが学ぶ点が多いと思う。
▽追記1:一緒に送られてきた『季刊 セオリスト』(009号、2018年冬季号、2018年1月1日号では、「木下武男、業種別職種別ユニオンの展望――日本労働運動の再生構想」を取り上げている。
「業種別職種別ユニオン運動」研究会のページ参照。
http://www.gyousyubetu-syokusyubetu-union.com/
▽追記2:研究者の東洋志さんが書かれている論文も参照してほしい。
http://e-kyodo.sakura.ne.jp/roudou/sorezorenoroudou-3.htm#azuma-2
●2017年03月05日:公共一般から何を学ぶか――個人加盟ユニオンの到達と可能性、東洋志、「季刊 Theorist」、東京公務公共一般労働組合、2017年冬季号、05号 (PDF版)
●2016年08月06日:産業別個人加盟ユニオンの到達点と課題――自治労連の実践から、東洋志、特集●労働運動の再生と産業別組織の課題、「労働総研クォータリー」、2015年夏号(2015年7月発行)(PDF版)
▽追記3:[2016年12月24日 (土)]
「首都東京における地域労働組合運動:新宿区労連と全労連・新宿一般労組の組織、運動」を紹介する。
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-25ac.html
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