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2016年9月 8日 (木)

『貧困世代』(藤田孝典著)が投げかけていること

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 『下流老人――1億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書、20156月)で衝撃的な問題提起した社会福祉士の著者が、『貧困世代』に陥っている青年・女性の側から、現代社会を切っている本が本書だ(『貧困世代――社会の監獄に閉じ込められた若者たち』、藤田孝典著、講談社現代新書、20163月)。

 

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 主な柱立ては、以下の通り。

 

 はじめに

 第1章 社会から傷つけられている若者=弱者

 第2章 大人が貧困をわからない悲劇

 第3章 学べない悲劇――ブラックバイトと奨学金問題

 第4章 住めない悲劇――貧困世代の抱える住宅問題

 第5章 社会構造を変えなければ、貧困世代は決して救われない

 

 著者は、「はじめに」で次のように書いている。

わたしは2015年、『下流老人――1億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)を刊行した。「生活保護基準相当で暮らす高齢者及びその恐れがある高齢者」を下流老人と定義し、高齢者の貧困の実像に迫ったのである。「下流老人」はおかげさまで、2015年の新語・流行語大賞にノミネートされ、その問題意識はひとつの視点として確立され、現在でも大変な反響を得ている。(中略)実際に『下流老人』を読まれた方々からは、「俺たちの老後はもっと悲惨になるだろう」「今の高齢者でこんな状態なら、私たちはどうしたらいいのか…」という意見が多く寄せられている。『下流老人』の読者層の中には、現在働いている若い年代の人々も多く含まれていたのである。 (中略)「普通」に定年まで働き続けられない。

 持続可能な形態の雇用は減少しているにもかかわらず、離職をする若者や働くことに困難を抱えた若者は「努力しない社員」とレッテル貼りされ、場合によっては生活に困窮することが増えている。悪いことに、日本社会は、それを善しとさえしているのだ。

 つまり、社会構造や雇用環境が変わらない限り、若者たちは以前のように働いても報われないし、容易に生活困窮する存在となった。彼らはすでに「社会的弱者」としての地位を確立している。だから貧困世代なのである。


 「はじめに」の最後に“ 日本社会に新たに登場した大問題「貧困世代約3600万人の悲劇」について、多くの人たちに「下流老人」問題以上に考えていただきたい”と結んでいる。

 本書で展開している、「ブラックバイト」や「奨学金問題」、「住宅問題」など青年・女性をとりまく労働・生活の貧困化は、高度経済成長期以降には表面化させなかった事態が、バブル崩壊以後、顕在化したわけだ。

 その問題発見から解決への「解」として、編集子としては、全くおどろきの共鳴をしたいのが、「提言1・新しい労働組合への参加と労働組合活動の復権」を提起していることだ。


 なんと政党主導型ではない超党派の労働組合運動づくりを問題提起している事実には、まったく敬服したい。

 

 また連合や全労連、全労協という旧来の枠組みではない形で、青年たちへの呼びかけをしていることも、驚きだ。「旧システム」においても民主主義的変革の担い手として、統合化した労働組合運動を願っている青年・女性にはぜひ読んでほしい本だ。

 「総がかり労働組合運動」を模索している人士にも、この訴えを身体化できる度量を示して、受け入れてほしい。

 

 ▽追記 本書では、以下のような提言を行っている。

 提言2・スカラシップの導入と富裕層への課税――財源は「取らないから、ない」 

 提言3・子どもの貧困対策とも連携を 

 提言4・家賃補助制度の導入と住宅政策の充実が貧困を止める 

 提言5・貧困世代は闘技的民主主義を参考に声を上げよう 

 結論・貧困世代をなくすために求められること

 

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