「総がかり行動」の労働運動版を――「労運研」からの呼びかけ
戦争法案反対時における「SEALDs、ママの会」の登場、参議院選挙での「市民連合」と「4野党共闘」などが、新しい時代転換の動きになってきていると認識している。
しかし労働組合陣営はどうなっているのかと思っていたが、社会科学研究者の五十嵐仁さんが書かかれた下記の文章――「現代の多様な社会運動の意味」(『学習の友』2016年7月号、五十嵐仁のページ参照)では、戦争法案反対・反原発運動の統一を進める「3つの潮流の共同」が生まれてきていることを示唆していることは注目したい。
http://e-kyodo.sakura.ne.jp/igarashi/igarashi-index.htm
3つの潮流の共同
第1に、市民団体、全労連系、連合系という3つの潮流の共同によって担われたということです。その一つの到達点が、2016年5月3日に東京臨海広域防災公園で開かれ5万人が参加した集会でした。この集会では市民団体が結集した「解釈で憲法9条壊すな!実行委員会」の高田健さんが開会あいさつ、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り生かす共同センター」の小田川義和さんがカンパのお願い、「戦争をさせない1000人委員会」の福山真劫さんが行動提起をしました。
この3つの団体は、2014年12月5日に結成された「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の構成団体です。市民団体とともに異なる潮流の労働組合が戦争法反対闘争を支えていたわけで、とりわけ全労連は大きな役割を果たしました。このような実績を背景に、「連合系」と「全労連系」との初歩的な「共同」が実現するなど労働運動にも一定の前進的な影響が生じています。
労働組合運動家の伊藤彰信(労運研共同代表)さんからも、その方向を前に進める声が出ていることも大事だ。
労運研とは、「労働運動研究討論集会実行委員会」の略だが、総評系の系譜を持った組合リーダーの集まりのようだ。伊藤さんは「全港湾出身の幹部」(どこかの発言で記憶しているが「連合のお誘い」を断った単産で有名)で、その他多様な発言者が登場している。
「最低賃金大幅引き上げを労働運動としてたたかおう」(伊藤彰信・労運研共同代表、「月刊労運研レポート」第24号、2016年6月)の中で、下記のように、“「総がかり行動」の労働運動版を”を呼び掛けている。
1 「総がかり行動」の労働運動版を
安倍首相は、参議院議員選挙で改憲勢力が3分の2 の議席を確保し、憲法改正に踏み出そうとしている。集団的自衛権行使を容認する閣議決定を期に、安保法制に反対し、憲法改悪を阻止するために労働組合、市民団体により「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動」が結成され、15 年安保闘争がたたかわれた。いまや、安保法制廃止の4野党共闘が形成 され、9条改正阻止を旗印に参議院議員選挙がたたかわれようとしている。
安倍政権を打倒するためには、安保法制の課題だけでは無理であろう。安倍内閣は高い支持率を維持している。それは、労働者を含む多くの国民が、安倍に景気回復を期待しているからであり、アベノミクスを信じているからである。安倍を打倒するには、新自由主義が貧困と格差が拡大してきたことを暴露すること、アベノミクスがさらに拡大を加速させていること、「一億総活躍プラン」はその破たんを隠す実効性の無いプランであること、そして、この状況を打破するには、労働運動がしっかりと新自由主義、アベノミクスとたたかい、貧困と格差をなくす社会づくりをめざすことである。
「総がかり行動」は、「戦争・原発・貧困・差別を許さない!」をスローガンにしている。労働運動として「戦争・原発を許さない」たたかいをすることはもちろんであるが、労働分野の課題である「貧困・差別を許さない」ことこそしっかりとたたかわなければならない。
平和フォーラムは「フォーラム平和・環境・人権」が正式名称である。総評から連合に継承できない課題である「平和・環境・人権」のたたかいを担う組織である、総がかり行動の「戦争・原発・差別」の課題に符号する。残された「貧困」問題は労働問題であり、労働組合が担わなければならない課題である。
労働運動研究討論集会実行委員会(労運研)が提起している「非正規労働者のためのユニオンキャンペーン」は、日本の労働人口の4割を占める非正規労働者が労働組合( ユニオン)に結集し、企業別労働組合を克服する運動をつくりあげていくことが、日本の労働運動を新しく創造していくための課題であるとの認識から出発している。企業別労働組合の克服は、思想的に、組織的に克服していかなければならないだろうが、それは、頭の中で考えることや組織いじりで解決できるものではなく、運動を展開しながら克服していくものであろう。
「非正規労働者のためのユニオンキャンペーン」は「貧困・差別」を課題としている。非正規労働者が受けている差別、例えば労働契約法20 条問題、賃金差別なども取り上げている。最も克服しなければならない労働分野における差別の課題は「非正規労働者は雇用の調整弁であり、非正規労働者が存在するから、自らの雇用と労働条件が確保されている」と思う「本工主義」ともいわれる正社員の差別意識であろう。
▽『労運研レポート』(2021年8月10日号、No.86、東京都港区芝 2-8-13 KITA ハイム芝301、全国一般全国協、『月刊労運研レポート』、発行責任者・伊藤 彰信
・http://rounken .org/
・郵便振替 00130-7-360171 労働運動研究討論集会実行委員会
・電話・FAX 03-3894-6620
・mail roukenj2014@yahoo.co.jp
若い世代のために、地道な共同行動から「1500円最賃実現、非正規労働者と正規労働者の同一労働同一賃金の実現」をすすめる労働組合組織化などの統一行動へ発展することを願っているのは、編集子だけではないだろう。
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