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2016年5月

2016年5月31日 (火)

『あたりまえの労働組合へ』(全造船石川島分会・佐藤芳夫著)が書いていたこと

  ▽追記(2116.11.01)

 全造船機械の加盟ナショナルセンターは連合。全造船機械の組織状況は厳しく、組織形態を造船以外の労働者も加盟できる合同労組とするも、なおも組織状況は厳しい状態が続き2015年9月4日から翌日にかけて開催された大会で組織の解散を決定、翌年9月9日に開催された84回大会において解散したWikipedia より)。

 

(追記)造船産業における少数派運動、造船問題研究家・小川善作、労働法律旬報(1186)、1988―2―25

 

  ▽ここより本文。

  1970年代初頭、まだ総評が元気で国民春闘に向かって突き進んでいた時代、1冊の労働組合関係書が出版され、注目された。

 タイトルは、『あたりまえの労働組合へ』(19734月)。

 著者は佐藤芳夫。

 

 160528satou1

 

 本の奥付では、以下のように略歴が出ていた。

1928年 東京都浅草に生れる

1948年 石川島播磨重工に管理工として入社

1951年 中央大学専門部経済学科(二部)卒業

1952年~全造船機械労組石川島分会の執行委員、三役などに専従活動のはか,石播重工労連中央執行委員長、全造船機械労組中央執行委員長、中立労連議長など歴任

19713月 職場復帰

現 在 全造船機械労組石川島分会委員長

 編集子はある労働雑誌の編集者になったばかりのころで、この業界でも有力な『月刊労働問題』がまだ出ていたころだったが、当時でも数少ない労働組合運動の関係書だった。

 それも亜紀書房という名前の出版社で、「ドキュメント東大闘争」として1969年に『砦の上にわれらの世界を』を刊行した出版社だった。

http://www.akishobo.com/company/

 その前後、同社から<藤田若雄・清水一編>で、5冊の「労働問題シリーズ」と銘打って以下のような出版もされた。

 既成革新からの離脱』(1970年)

総評のゆくえ』(1970年)

『新左翼の労働組合論』(1971

『続 新左翼の労働組合論』(1974年)

『労働運動の合法的領域』(1972

 さて『あたりまえの労働組合へ』は、資本による全造船石川島分会の解体攻撃とのたたかいを描いた本だった。

著者の佐藤さんは、経歴によると「全造船機械労組中央執行委員長、中立労連議長などを歴任」した「単産委員長」を担った人だ。

そのひとがなぜ? という疑問から、本を読み始めた。

なぜ出版したのか、その目的は(まえがき、あとがき、目次)、以下のページに収録してある。

 

  《それぞれの労働組合運動史・論Ⅰ のページ》

 

 1960年代の三菱長崎造船、横浜造船、それにひきつづく資本・同盟の解体攻撃への怒りはもとより、「石川島共産党のもぐり込み戦略」を許せなかった、その点を当時(後世)の活動家諸氏に伝えたかったようだ。

 編集子も東京争議団関連の集まりで、全造船横浜分会のSさんから話を聞いたことがあるが、「石川島」関係者が争議団運動レベルで活動し始めたのは1980年代後半だったと思う。編集子が別の分野の雑誌・単行本編集に代わったあとであった。

 どのような総括を行っているのか、文書になっていないので、外部の人間としては不明だ。

木下武男さんは『格差社会にいどむユニオン――21世紀労働運動論原論』(花伝社、2007920日)で以下のように、その意味を書いている。

http://e-kyodo.sakura.ne.jp/roudou/120112yunionsyopu.htm

全造船の調査部長を務めたことがある小川善作は、労働運動「第二期」に続発した労働組合の分裂・脱退問題を、全造船と造船総連との関係で体験した。一九七〇年、石川島播磨分会で全造船からの脱退問題が起きた。「脱退賛成七五〇〇、反対二九〇〇という結果で全造船脱退が決まった」。全造船は、脱退に反対してきた「全造船を守る会」の組合員に対して、「分会組織の維持指令」を出したが、分会に残ったのは三〇名ほどであった。「左派と言われた人たちが、この脱退をあるがままに承認して、全造船と袂を分かっていくという経過」をとった。これこそが、企業別組合の主導権を階級的民主的潮流なるものがいつの日か握るだろうという「展望」のもとでの悲劇的な典型事例であった。小川善作はその後、「いずれ職場の多数派になるといっても、それは百年河清をまつに等しい」(小川善作「造船産業における少数派運動」「労働法律旬報」1988225日号)と語った。

(注)造船産業における少数派運動、造船問題研究家・小川善作、労働法律旬報(1186)、1988225

 1980年代初頭、「インフォーマル組織へ対抗する人たち」に関して、大企業職場の労働状況を取材したくても、民間大企業職場に「社会党系の人物はいなくなり」、「○○○委員会という共産党の看板を掲げていた集団」への取材は、ほとんど不可能だった。

 佐藤さんは「続編」として、「(「人間としての尊厳をもとめて――『小沢一郎の暗躍を支える連合』、第1部 佐藤芳夫稿 第2部 対談:中野洋、社会批評社」、199312月)を書いている。

 その奥付の肩書は、「現在 全国労組交流センター代表運営委員」となっている。

 本書の第2部は「動労千葉委員長の中野洋さん(当時)」との対談だ。その〈はじめにと目次〉も上記ページにUPした。

 

  佐藤芳夫さんは、20061125日にお亡くなりになっている。

 全造船石川島分会は今でも旗を守っている[大会写真、企業在籍はいませんがOBで全造船の旗を守っています(石川島分会)より〕

 136-0071
東京都江東区亀戸7-8-9
松甚ビル2階江東労組連・ユニオン事務所内
TEL(03)3638-3366
 FAX(03)5626-2423

 http://www.zenzosenkikai.jp/Bunkai/Tobu/T-Chihon.html#ihi

 

 

 



 なぜ労働組合運動をやろうとする人たちが生まれてこないのか。

 

 大企業の職場における労働組合運動は不可能なのか?

 

 「もぐり込み戦略」を指揮した人物は、もういない。

 

 指揮された人たちは今、どのように思っているのか。

 

 

 

 

 

 

 

 大昔、労働法の先達から「個の確立」こそが、日本の労働者の運命を決めるときざみこまれた編集子は、その時反発したが、そうだったのかと、思わざるを得ない。


  ▽追記(2016.07.10):『あたりまえの労働組合へ』・全造船石川島――議論は続く。

 

 

 

http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-7f4c.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年5月16日 (月)

ショップ・スチュワードに注目していた出版物――中林賢二郎さんのページ更新

3年前になるが〈2013415 ()〉、「ショップ・スチュワード、サンジカなどヨーロッパの労働組合を紹介――中林賢二郎さんのページ更新」をUPしたが、毎月、10人ほどROMで入ってくる人がいる、

http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-1247.html

 

WEB上の検索でも、「ショップ・スチュワード情報」は、ほとんどUPされていない状況にもよるだろうが、日本の労働組合運動の再生を願っている人には、「職場に労働運動を形成する」ヒントとして「ショップ・スチュワード」があるのではないかと考え始めている――だから読み手が生まれていると編集子は考えている。

 

忘れていたわけではないが、故中林賢二郎さん(法政大学)が1980年初頭にイギリス留学時代のレポートが1冊の単行本になっている。

書名は『イギリス通信――経済危機と労働運動』(中林賢二郎著、学習の友社、新書版、1981925日)だ。

 

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  その中でもショップ・スチュワードが「職場委員」という項目で書かれているので、サイトにUPした。

http://e-kyodo.sakura.ne.jp/nakabayasi/shopstewards.html

 

読み返してみると、その量的多さにビックリした。

 「一九七一年の推定では、全イギリスで二五万から三○万におよぶ職場委員が選出されており、七三年にはこれが組合の存在する全経営の八○パーセントで活動しているものと推定されています。」


  イギリスの人口は2013年時点で推計6,410万人、日本のほぼ半分。

人口に占める労働者の割合は、今特定できないが、日本社会なら「50万人を超える職場委員」がいることになる。

 

その職場委員は、以下のような人たちだという。
 [
一九六○年代半ば頃の調査では、その典型は、「四五歳の熟練工で、会社内でも組合でも『出世』する気のない労働者」だとされていましたが、その後の調査によると、もっと若い層が選出されるようになっており、最近、シェフィールドの機械産業労働者についておこなわれた調査では、四○歳以下がその半数を占めていたといわれます]

 

 また職場委員像として、以下のようにタイプ化して書かれている。

 

 [第一は、組合運動の原則を身につけ、組合員からも信頼されて、職場労働者をひっぱっていくような、いわゆるリーダー型職場委員です。かれらは原則を身につけているだけでなく、休憩時間には職場労働者の誰とでも話をし、ジョークをとばし、ゲーム(チェスなど)もすることで、職場労働者の全員に親しまれ信頼されていると同時に、こうしているあいだに、組合員の要求や意識の程度を敏感にとらえてゆく能力をもった人たちです。

  第二は、原則によって行動し、リーダーシップを発揮するのでなく、職場労働者の平均的な意見に従っているだけの職場委員です。

  第三は、状況しだいでどのようにでも言動を変える、信頼のおけない職場委員です。

  第一の型がもっとも職場委員らしい、また成果をあげることのできる職場委員です

  このリーダー型職場委員は、民間企業の現場にもっとも多く、事務労働者や公務員では第二の型の比率がふえることも、調査の結果明らかにされています。

  職場委員のすべてがリーダー型であるわけではなく、第二、第三の型をふくんでいることは、職場組織が企業内の組織であるだけに、重要な問題をのこしています。

  というのは、リーダー型職場委員でさえ、ときには経営側との交渉に深入りしすぎて、組合員から浮きあがり、企業側のとりこになって、職場労働者の利益を裏切る例もでてきているからです。

  そして、今日では民間企業だけでも、五○○○人、公務・公企体をふくめると一万人以上の常任職場委員(有給で、仕事をはなれ、職場委員の仕事に専念する。その大部分は、職場委員でつくられる職場委員会の代表)がいるといわれるだけに、職場労働者がうっかりしていると、企業側が手をまわして、職場委員会と組合とを切りはなし、これを企業側のとりこにしてしまうという可能性は、おおいにありうることなのです。]

 

 故中林さんは、「日本の組合とイギリスの組合」なかで以下のように、イギリスの労働組合運動をとらえている。

 

[イギリスの労働組合運動にとって伝統的な多数組合制(いくつもの組合が同一企業の労働者を組織していること)や地域別・産業別、もしくは地域別・業種別の団結の原理(そうしたいくつもの組合に分属する労働者が、企業の枠をこえて団結し行動すること)]

 [企業の枠をこえて団結し、同一職種や同一産業の労働者の賃金・労働条件を守る――これが労働組合だという意識・常識が、労働者のあいだにひろく根づきました。]

[なぜイギリスでは日本とちがってこうした企業の枠をこえた組織が発達し、今日なお力をもっているのでしょうか。

 最大の理由は、一九世紀の六○~七○年代にイギリス労働組合運動が確立し、運動をささえる伝統、意識、習慣が形成されたことにあるものと思われます。]


  このような伝統と産業の変化などに対応していると「職場委員」の前に書かれている。

 

 さて35年前のレポートだが、このような「職場委員」(ショップ・スチュワード)は今どうなっているのか、知りたいものだ。

  ▽追記:13/04/15➡
16.05.26(本文をスキャンして、このページでも読めるようにした)

   http://e-kyodo.sakura.ne.jp/nakabayasi/shopstewards.html#shopstewards-2

 

イギリスのショップ・スチュワード――イギリス労働組合運動における職場組織と職場委員

  現在(2013年)の労働組合組織率は、「17.9%(前年比0.2ポイント減)と、昭和22年の調査開始以降、過去最低を更新した」と報じられているなかで、その労働組合員の7割が大企業社員・公務員だ。

 大部分は連合加盟の単産だが、ヨーロッパのように複数の産業別組織が地域にあるわけではなく、職場における労働条件の交渉や人員配置について、だれがになっていくのか――日本の組合活動家も、昔は勉強していたようで、今はあまり聞かれなくなった。それは団体交渉や労働協約闘争がなくなった組合しか見えていないからだ。

 

 1800万人に及ぶ非正規労働者をどのように組織するか、これが時代のテーマだし、「大企業官制高地論」を昔から信じていなかったが、未来に「新しい産業別・地域別のユニオン」ができることを期待している。

  これからは、地域を軸に職場に攻め上るしかない。

  その暁に登場してほしい話がこの論文だ。

 中賢さんは『現代労働組合組織論』(1979年刊)を書いているが、それ以後にイギリスにおける職場レベルの担い手=ショップ・スチュワードshop stewardについて、大原社研の室報に書いているので、ここに再現したい。

  柱立ては、

 その歴史

 組合とショップ・スチュワード

 ショップ・スチュワードが獲得した諸権利

 現在のショップ・スチュワードの任務

 ショップ・スチュワードのタイプ

 スチュワードの戦術

 合同協議制とショップ・スチュワード

 プランにおけるスチュワードの組織

 組合との関係

 ショップ・スチュワードの企業別組織

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