路面電車を守った労働組合―総評の伝統は消えていない
21世紀に入って「労働組合はなにをやってんだ」という苛立ちをお持ちのシニアの方が多いと思う。
今回紹介する『路面電車を守った労働組合――私鉄広電支部・小原保行と労働者群像』(河西宏祐著、平原社、定価:2000円+税、2009年5月)は、少数派組合から多数派、そして統一を実現し、「路面電車を守る闘い」をすすめた「闘いの記録」(昔のわれわれの仕事の名称)である。
本書の核になる「小原保行」という労働組合リーダーを縦軸に描き出す方法は、読者にとって感情を寄り添う安心感を与えるなど、編集子が若い時教わったドキュメント作家のルポ方法に相似して、とてもうれしい本づくりだ。
また暦年のリーダー一人ひとりと、多くの組合員の顔が見える「当たり前の労働組合」の取り組みを描いた本書は、総評や私鉄総連(故内山光雄さんを始め)が向かいたかったであろう労働組合運動(実現できなかったといえ、戦後多くの組合活動家が望んだ)が広島で発展的に組織化されている(労使協調の同盟路線ではなく)ことを表現した貴重な実践が描かれている。
しかもルポライターではなく「労働社会学の研究者の仕事」として、社会に問うていることにも敬服する。
本書について、福岡弁護士会のBOOK紹介では、“労働組合活動の原点とも言うべき大事なことがぎっしり詰まっています”と紹介している。
「久しぶりです。労働組合って何をするところなのか。労働運動のすすめ方。職場で労働者の権利を守って闘うための工夫。少数派に転落した労働組合が再び多数派に回復する闘いで求められるものは何か。この本には労働組合活動の原点とも言うべき大事なことがぎっしり詰まっています。
この労働組合は、市内を走る路面電車を存続させ、契約社員を正社員化させたのでした。私鉄広島電鉄支部の物語です。」
編集子は組合員ではないが(シンパシーを感じている個人)、「全国一般東京東部労組」ニュースレター2009年7月号に掲載されている、と報じている(「レイバーネット」にUPされている)。
http://www.labornetjp.org/news/2009/1248843586560staff01
広島電鉄の労働組合「少数派から多数派へ」
広島電鉄の労働組合は、今春闘での契約社員全員の完全正社員化実現や路面電車を守る闘いの成功でマスコミでも有名になった。 しかしこの組合(私鉄総連広電支部)の真骨頂は組合分裂攻撃を受けていったん少数派になったが、その後の幾多の闘いと活動によって26年かけて多数派になり、ついには第二組合を吸収合併したところにある。
東部労組各支部では少数派が多く、日々多数派をめざして闘っているが、広電の闘いは大いに参考になると思う。最近、恰好の本が出版された。河西宏祐著「路面電車を守った労働組合‐私鉄広電支部・小原保行と労働者群像」(平原社2009年5月発行)である。比較的読みやすくまとめられているのでぜひ直接本を読んでいただきたいが、感心したところを紹介したい。
圧倒的少数派からの脱却は、反差別や労基法違反の小さな闘いで成果を積み上げていくこと、人事考課など会社側の査定を排除しできるだけ客観基準を導入すること、「ゼロの闘い」と称して短期決戦でなく数年がかりで要求をかちとること、労働委員会、裁判など「他力」闘争に依存せず、職場闘争、ストライキなど「自力」闘争に依拠すること、闘争の勝利がそのまま組織拡大になるわけでなく独自のオルグ「説得」活動で組合員を獲得することなど、それぞれユニークで粘り強い闘いで達成されていった。
また労働組合の団結力が「学習・集会・行動」「闘争資金」「青年・女性部」「共済」「政治力」にあること、さらに三井三池闘争の敗北の原因が職制労働者の敵視対策にあったとの判断に基づく「敵は最小に、味方は最大に」の職制労働者獲得対策の確立、動員手当はけっして出さないことなど広電支部から学ぶ点は多い。(石)
同書を書いた労働社会学者の河西宏祐さんはさらに――『全契約社員の正社員化を実現した労働組合』(2011年、早稲田大学出版会、のちの平原社版を2015年)の著作も書き、朝日新聞紙上でも書評ではなく記事として描かれていたことを記憶している。
Amazonの検索以外に、国会図書館のPCインデックスで「河西宏祐」を検索すると、「労働社会学資料シリーズ」が「1~8」あり、その実物を見ようと、国会図書館に赴いた。
奥付を見ると、著者の自宅とメールアドレスが書かれている。
どうやら自費出版のようで、えらいものだ。
「シリーズ8」に『講演集・労働組合とはなにか―広電型労働組合主義の源蔵を求めて』いうタイトルの200ページ超えの本があり、その目次や「広電現象」と表現している大反響の姿をまとめているページがある。それらを以下の方々の書評を含めて、下記のサイトにUPした。
「それぞれの労働組合運動史・論-1」(現代労働組合研究会のページ)
河西宏祐著『講演集・労働組合とはなにか―広電型労働組合主義の源蔵を求めて』(「労働社会学資料シリーズ 8」、河西宏祐編、2月28日、自家版A4判、224ページ、2015年2月28日、河西 宏祐・早稲田大学名誉教授)
1 はじめに
2 目次+著者紹介 (PDF版)
3 「広電現象」の反響 (PDF版)
『路面電車を守った労働組合――私鉄広電支部・小原保行と労働者群像』
1 弁護士会の読書(福岡)、更新日:2009年8月 5日
2 山根正幸(公益社団法人 教育文化協会のHP)
http://www.rengo-ilec.or.jp/report/10-6/5.html
3 山本 潔(東京大学名誉教授)(大原社会問題研究所雑誌 No.613/2009.11)
4 特定非営利活動法人 労働者運動資料
『電産の興亡』(早稲田大学出版部 河西宏裕著)
『路面電車を守った労働組合』(平原社 河西宏裕著)
『全契約社員の正社員化を実現した労働組合』(2011年、早稲田大学出版会、のちの平原社版を2015年2月)
1 鈴木 玲(法政大学大原社会問題研究所教授)(公益社団法人
教育文化協会のHP)
http://www.rengo-ilec.or.jp/report/12-02/3.html
2 嵯峨 一郎(熊本学園大学)、日本労働社会学会年報 / 日本労働社会学会編集委員会 編、23号、2012年
3 評者:龍井 葉二(連合総合生活開発研究所副所長)、河西 宏祐 著 『全契約社員の正社員化─私鉄広電支部・混迷から再生へ(1993年~2009年)』、日本労働研究雑誌 2012年5月号(No.622)
番外:雇用と生活を守る取組み――契約社員の正社員化事例を通じて、佐古生明(私鉄中国地方法労働組合広島電鉄支部執行委員長、一橋大学フェアレイバー研究教育センター、労働法律旬報、NO.1806、2013年12月25日)
電産中国や広電の研究で有名だった早稲田の河西宏祐さんが亡くなったそうです。この人の場合はもうやりたい研究をやりつくしたという印象がありますね。https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=798756126959939&id=100004766769230&pnref=story
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