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2015年6月24日 (水)

鶴岡生協、そしてまちづくり協同組合へ―20数年前の思いに遡って刺激的な「いのちとくらし」研究所のシンポジウム

 ▽追加(2015.01.01)以下の研究所報が発行されました。

 

  ●2015年度定期総会記念シンポジウム

 

  「地域のくらし連携について考える―鶴岡から学ぶ―」

  ・鶴岡から何を学ぶことができるか…杉本貴志

  ・事業協同組合方式による「住み続けられるまちづくり」…岩本鉄矢

  ・社会福祉法人からみた地域のくらし連携…井田 智

  ・生協共立社連邦運営の基本的考え方…松本政裕

 

  (『いのちとくらし研究所報』2015925日、No52、特定非営利活動法人 非営利・協同総合研究所いのちとくらし、頒価1000円)

  お申し込みは、inoci@inhcc.org へ。

    151001inotikurasi

 

 

 先日(2015619日・〔土〕)、明治大学の研究棟4階で「特定非営利活動法人非営利・協同総合研究所いのちとくらし」主催のシンポジウムに非会員でも無料で傍聴できるので参加した。

  テーマは、「地域のくらし連携について考える―鶴岡から学ぶ―」として、「鶴岡における地域連携の全体を知る機会とするため、医療福祉、生活全体や地産地消など産業のつながりなどについてご報告いただきます」と案内状には書かれていた。

これは行って傍聴してみなければと思った。

報告者は、「庄内医療生活協同組合専務理事、研究所理事 岩本鉄矢」「生活協同組合共立社理事長 松本政裕」「社会福祉法人山形虹の会事務局長 井田智」で、「コメンテーター・関西大学商学部教授、研究所理事 杉本貴志」(敬称略)であった。

 

なぜそのように思ったのか書いておくが、1980年代から飛躍的に社会に登場した「市民生協」という言葉を積極的な意味で感じ、刺激的な影響を受けたのは、当時の鶴岡生協・佐藤日出夫さんが書いた本を読んだからだった。

それはまた「市民生協」を知る上で、数少ない実践を学ぶ書だった。

 

手元に残っていないので調べてみると、以下の4冊があった。

『鶴岡生協と住民運動』(佐藤日出夫美土路達雄編 現代企画社、1968年)

『生協奮戦記』(佐藤日出夫著、家の光協会、1970年)

『こ​こ​に​虹​の​旗​を――鶴岡生協と住民運動』(佐藤日出夫, 美土路達雄共編、民​衆​社、1981年)

『虹のロマン――共立社連邦の理念と運営』(佐藤日出夫, 武田末治 著 民衆社、19847 月)

3~4番目の本を民衆社が出版し、「生協ってなに!」という問題意識がわいてきて読み始めた(当時、珍しく「赤旗」広告に載った協同組合関係出版物)記憶がある。


 また総評などの労働組合が国民春闘から退歩していく姿を見て、「地域に生協と労働組合」(企業内組合ではなく)があるのが、これからの時代なのではないかと強烈に思ったからだった(美土路達雄先生の奮闘は農協労働者向けの論文・本があり読んでいたが)

 

のちに、今崎曉巳さんと二宮厚美さんの本づくりなどから紹介されて会った労働者出身の大阪よどがわ市民生協(吹田市)の柴田光郎専務理事さんと、共通する思いを話し合った本の著者だった。

大学生協出身者に聞いても、「小さな単協の幹部の本」、というイメージを持っている人が多かった印象だったので、「こんな人もいるのか」と共鳴した記憶がある。 

その縁で大阪よどがわ市民生協雑誌づくりを手伝い、彼の夢の一端――大阪にも産直中心だけでなく、鶴岡生協にならってホンモノの地域生協を実現したい――をよく聴かされた。

 

当時、共立社・鶴岡生協が打ち出していた諸事実――「班の原点(くらしのまじりあい、共に知恵を絞り運動・事業の核として位置づけた)を常に貫いた生協」、「灯油闘争をたたかった生協」「反ダイエーの店舗のたたかい」「中央集権ではなく地域を基礎とした生協・連邦制」「イタリアと交流している生協」――を発見するために、編集子は1990年代初頭、鶴岡地域への取材に5回ほど通ったことがあった。

 

大山店(当時からセンターといっていたのか、不明)という小さな店舗と「炬燵に入れる範囲の班会」の意味、冬場のブリザードに近い足元からの雪風とその中での暮らしと班会・店の大事さ、町中の住民が組合員ということ、閑散としたメイン商業プロムナードとダイエー店舗の違和感も教えられた。

地に張り付いた組合員さんの生協への信頼感は、都会の市民生協のスタイル・共同購入とも違ってつながりが大事という(編集子の聞き方が間違っていたかもしれないが)、店舗のもつ意味を強調していた。いちいちそうだろうなと感じた次第。

だからその後、多くの市民生協の側が店舗展開を実行して、その成果を得ないうちに撤退し、「個配」を事業のシステムの核にしている問題については、今でも不思議な思いはある。

 

この過程で生活クラブ生協の名物畜産企業である「平田牧場」の大版タブロイドカラー新聞形式のチラシ(班に1部と店舗組合員向け。大阪では市民生協で購入できた)を作り、新田社長さんとも面談して、佐藤日出夫さんの思い出を聞いたことがあった。

生活協同組合共立社のあゆみ

 http://www.yamagata.coop/about/page/detail/4/



 歴史は2回転半、回っているが、地域から内発的に事業と複合的な組織を作っている事実には、学ばされた。

 

メイン報告者は岩本さんで、「事業協同組合方式による『住み続けられるまちづくり』」が報告された。

「鶴岡地域の特徴・歴史」、「鶴岡における協同組合運動の歴史と特徴――団体主義と個人主義、目的の手段としての事業と運動・灯油裁判、ダイエー出店反対運動・水道料金値上げ反対、市長選挙」「まちづくり協同組合設立の経過と特徴――異業種の集まりではあるが、共通の住民(組合員)が中心にすわっている」「仕事づくりを目的の一つに位置付けた、労協運動の挫折」「まちづくり協同組合傘下の組織と事業の現況――取組み業種、利用数、事業高、職員数、世帯比組織率」。

各加盟組織の活動の特徴と課題――(1)社会福祉法人山形虹の会、(2)生活協同組合共立社、(3)庄内医療生活協同組合――「①地域全世帯の過半数を組合員として組織、②健康な人を含む組織としての健康づくり一介護予防活動、健診事業フィットネス事業・介護予防、③患者に寄り添う医療の必然としての介護・住宅事業への発展、④医師・看護師不足による医療事業の制限」

このあと、井田さん、松本さん、そしてコメンテーターの杉本さんのコメントがあるが、全文は、「いのちとくらし 研究所報」(特定非営利活動法人非営利・協同総合研究所いのちとくらし、20159月刊予定)に出るので、読んでほしい。

 

気が付いたことのメモ。

1 コメントをした大高研道先生より、鶴岡地域では「購買生協」と「医療生協」が両者あい混じって、地域で事業・運動・人材交流が行われている。ほかの地域から見るとめずらしいのではないか、と。

市民生協と医療生協がいい関係にある地域はあるのかどうか、私が関わってきた経験から言えば、ほとんどない(これは私見)。だから鶴岡地域は貴重なのだ。

2 庄内医療生活協同組合は、地域の48.2%の市民が組合員。

3 事業協同組合システムを活用した「庄内まちづくり協同組合 「虹」」の存在。

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 『庄内まちづくり協同組合「虹」――新たな協同の和でつくる いつまでも くらし続けられる まちづくり』(20148月)より。

△クリックして下さい。


 4 対行政といい関係ではないが、着実に「福祉行政の一端」をになっている姿(1000名を超える社会福祉協議会があるとのこと。これは民間活力、民間でできるものは民間へという保守系政府の言い分にも反しており、市民の活力をどのように引き出すかという改革すべきテーマ)

5 労協運動の挫折(レジュメに書いてある文章)

 労働者協同組合の挫折と高齢者協同組合の設立――全国的な労働者協同組合運動の動きを背景に、1984年鶴岡協立病院の新築開設時に、病院清掃業務や夜警業務の受託を前提に『直轄庄内事業団』として労働者協同組合が設立された。創設後、中央組織への指導料などの負担もあり、労働者自らが主人公とはいうものの、県の最低賃金以下の時給しか受け取れない状況が続き、数年で中央組織から独立した地域事業団に衣替えを行った。しかし、低い報酬から脱却できず、現地管理者による不正の続発もあり、労協の理念とは乖離した組織状態が続き、労協は解散し、高齢者部分が介護事業を主たる事業とする高齢者生活協同組合を設立することとなる。そのため、清掃や夜警業務は職を失うこととなるため、まちづくり協同組合がそれらの人々の雇用と業務を引き継ぐこととした。

 

そうだったのかという思いがわいてきたが、この『直轄庄内事業団』についても取材に行った経験がある。そのときのことは「出羽三山神社」の2446段にわたる上りに、「知っていれば来なかった」という記憶しか残っていない。


  最後に、これまでの経験をまとめ、新しい出版物として、若い世代に伝えていってほしいものだ。

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