中西五洲さんの思い出
労協連総会とセンター事業団総代会(「日本労協新聞」2014年7月5日号)の冒頭で理事長の永戸祐三さんは、2013年11月16日、91歳で死去した中西五洲さん(1922〔大正11〕年生まれ)を追悼して、次のように講演の中で語っている。
“中西さんとは、激しくやりあったこともあったが、中西さんは、自立的、自主的に大衆運動を考えようとしていた人だった。
学生時代、治安維持法違反で検挙され投獄された。戦後、失業対策事業に就労し、「松阪職安事件」で逮捕された時、中西さんに聞こえるように自発的なデモがおこった。中西さんはその時、「仲間を信じられる」と思い、事業団でも「自立と協同と愛の人間に育とう」、また「育てるような環境としての組織でなければ」、と主張した(人だった)。“
「昔軍隊、今総評」とマスコミで評された時代(編集子が知っているのは1970年代から)、総評大会で反主流として演説したのは、細井宗一(国労革同)さん、引間博愛(全自運のち運輸一般)さん、紙パ労連の人など、本当に少なかったなかで中西五洲さんはニコヨンさんの労働者を組織した全日本自由労働組合(全日自労)委員長として、「失業と貧乏をなくすための労働組合を」と滔々と演説し、総評の岩井事務局長に迫っているのを記憶する。
1980年代になると三重県で市民生協をつくりだし、町づくりをすすめる労働組合、社会的責任を持つ労働組合運動としての「民主的改革路線」など、不思議と主流派の中にも、問題意識がつながる労働組合リーダーだった。
編集子も松阪職安事件をベースにした『労働組合のロマン――苦悩する労働組合運動からのレポート』(1986年刊)の編集・制作に参加した。その前に出た本が、『日本の労働組合運動をどう建てなおすか―労働戦線統一/春闘再構築/大衆運動の法則性 』(1981年11月)だ。
民主的改革をめざす全日自労のたたかいの経験は、シーアンドシー出版時代に、次の本でまとめた。執筆者は木下武男さん、手島繁一さん、矢吹紀人さんだ。
『皆でたたかった50年―全日自労三重県本部の歴史』(全日自労建設一般三重県本部、 協同総合研究所、1996年)
▽参考:『皆でたたかった50年―全日自労三重県本部の歴史』の刊行に当たって、手島繁一、『協同の発見』、1996年6月号、第51号
http://jicr.roukyou.gr.jp/publication/1996/51-14.pdf
民革路線については、「黒川俊雄慶応義塾大学教授の還暦記念論集」に永山利和さんがまとめて執筆した文献を以下にUPした。
労働組合運動の民主的改革路線、中西五洲・永山利和、労働組合の民主的改革、1985年3月
その後は、ジャーナリストの岩垂弘さんが「第148回 新たな挑戦・労働者協同組合― もの書きを目指す人びとへ」で、以下のように業績を紹介していることなどでも有名になった。
http://www.econfn.com/iwadare/page256.html
事業団の設立は各地に伝播した。一九七九年には三十六の事業団の代表が熱海市に集まって事業団の全国組織「中高年雇用・福祉事業団全国協議会」を結成した。そのうち、事業団を協同組合の一つ、労働者協同組合と位置づける方向が協議会内で強まり、それに伴って一九八六年には名称を「中高年雇用・福祉事業団(労働者協同組合)全国連合会」と変えた。さらに、一九九三年には「日本労働者協同組合連合会」と改めた。
この事業団方式を生み出し、全国に広げてゆくうえで強力なイニシアティブを発揮したのは中西五洲氏である。同氏は全日自労の委員長を務めたあと、中高年雇用・福祉事業団全国協議会、中高年雇用・福祉事業団(労働者協同組合)全国連合会、日本労働者協同組合連合会の各理事長を務めた。
協同総合研究所を創立した折にともに尽力した法政大学経営学部名誉教授の角瀬保雄さんが、『理想社会への道』(2005年2月)発刊のときに発表している文章があるので、ぜひ一読してほしい(非営利・協同総合研究所いのちとくらし「研究所ニュース」発行日2005年05月16日)。
▽追記 生前、最後の発言かもしれない。
○元全日自労中央執行委員長、中西五洲氏に聞く、「全労交通信」第15号(2013年10月20日発行)
http://zenroukou.jimdo.com/2013/11/02/元全日自労中央執行委員長-中西五洲氏に聞く/
▽追記
続・中西五洲さんの思い出
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-2462.html
◇これまで書いてきたものやUPしたものを一挙PDF化した。ご一読を。 (2015.02.23)
中西五洲さんの思い出――主な論文・エッセイ抄(PDF、A4判、95頁)
▽追記 2015.02.13
大衆運動における法則性――中西五洲さんの思い出・その3
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-8936.html