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2014年5月31日 (土)

イタリア協同組合の源泉を教えられた――『しがらみ社会の人間力』

 私がイタリアのトリノ・ボローニャ調査(当時の大阪よどがわ市民生協主催)に今崎暁巳さん(故人、ドキュメント作家)、二宮厚美さん(現神戸大学名誉教授)、柴田光郎専務理事以下組合員、職員など総勢20名ほどで訪問したのは、1988年秋。

 当時は、日本のいくつかの市民生協(山形の共立社生協〔旧鶴岡生協〕、京都生協など)で、イタリアの協同組合について学ぶことがブームになっていた時期である。

 

 今回、紹介したい本は、『しがらみ社会の人間力――現代イタリアからの提言』(八木宏美 著、新曜社、201110月、四六判304頁、定価:本体2600+税)だ。

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 八木さんの前著・『違和感のイタリア』(2008年刊)は、「イタリア協同組合のページ」で紹介してある。

 イタリアのコミュニティづくり――その伝統・基盤を学

 



 本書のタイトルは、多分、出版社側がベストセラー『老人力』(赤瀬川 原平著)にあやかって、意気込んで付けたのであろう。しかし本書の別な読者としては、『現代版ユートピア“協同組合” ――イタリア紀行』としても、マイナーな人たちに21世紀のエポックとしての本になっているはずだ。

 

 その事実は、「第7章 モラルとリーダーシップ―現代版ユートピア“協同組合”」というテーマで描かれている(柱立ては以下のとおり)。

 

1 戦後イタリア共産党の強さの秘密

2 国家はマラリヤ?

3 戦後共産党はなぜ協同組合を戦略としたのか

4 協同組合はどんな経済システムか

5 『ユートピア』と理想社会の条件

6 伝統的同業者組合と近代協同組合

7 基本的経済システムとしての協同組合の提唱

8 プロセスの社会主義―協同組合

9 社会実験―何が地域事業を成功させるのか

10 民主主義を機能させる条件とは

 

 この章に到達するまでに、“カトリック教会と並んで「二つの教会」と呼ばれるほど絶大な影響力を誇った共産党が戦後のイタリア地域社会で実際に担ってきた役割や、機能する社会に必須のリーダーシップとモラルについて”分析されている。

 別の角度からも、少数の読者には、「第5章 茶の間の共産党と元祖社会主義者キリスト」「第6章 地域リーダーのモラル学校」をお薦めしたい。

 

 さて、社会的協同組合の誕生で再注目されているイタリアの協同組合の源泉は、この共産党の戦後史にかかわって、「カトリック教共産主義派」(グラムシ研究所)を立ち上げ、「共産党学校」で学んだ地域リーダーを地域展開させ、「1947年以降、協同組合は革命を考える共産党の目指すものとは別物であり、センチメンタルな社会主義活動だ」という路線を転換させたことにあるという。

 その後、イタリアの「伝統的同業者組合」などを引き継ぎ、「モラルを徹底した共産党系協同組合」を発展させ、カトリック系協同組合としのぎを削ってきたと報告している。


 著者は、ノーベル賞経済学者のアマルティア・セン教授の言説の生きた例として、「コーオペレーション社会主義」の進展は「自由資本主義が高度に発展している国でこそ、実現できる」と力説している。

 イタリア版里山資本主義のような特筆すべき実例として、「アペニン山脈中央部地域協定プロジェクト」の興味深い社会的実験もレポートしている。

 

皮肉にもスターリンに指示されたトリアッティの政策(p221)―国内宥和政策と多数派戦略や冷戦下、支配層から排除された左翼人が、大学、ジャーナリズム、法曹界、地方自治などの場で影響力を持っていたことなど、グラムシの「文化を支配するものが国を支配する」(p243)という生きた事例も描かれている。

 

イタリアは、「1960年代構造改革論」の祖国として日本に紹介されてきたが、そのことによって左翼系の読者は毛嫌いするが(ただし「団塊の世代まで」だろうが)、イタリア協同組合の源泉・歴史、現代的社会的実験の場として現状を紹介している本書を読んでほしい。

 

  ▽追記(14.06.10

 

  イタリアの社会的協同組合を紹介――菅野正純のページを増補更新

 

  http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/post-1441.html

 

 

 

 

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