竹中平蔵という男・近代経済学者
テレビのニュースで、安倍首相の発言する場面。そのそばに竹中平蔵(1951年生まれ)がいた。国家戦略特別区域をつくるために提案した場面だ。
私が参加しているメーリングで国家戦略特別区域について「その主要なターゲットは東京都を“世界で一番ビジネスのしやすい”地域にする、つまり都民の暮らしや雇用を守るのではなく、グローバル多国籍企業がより活動しやすくなるように、東京や日本の各地域を変えて行こうとするものである」と警告を発している。
“国家戦略特別区域とは、第2次安倍内閣が成長戦略の柱の一つと掲げる経済特区及びその構想。外国企業の誘致のため、「解雇ルール」、「労働時間法制」、「有期雇用制度」の3点を見直し対象とする特区を設けるというもの。
その中心人物が竹中平蔵だ。彼は、小泉構造改革政策のブレーンで、国民に格差社会をもたらした人物で、青年層・女性たちの非正規労働者化を推進し、地方経済・自治体財政を衰退化させたアメリカ仕込みの「近代経済学者」(いまは新自由主義経済が主流だが)だ。
そこでインターネット検索でヒットした『市場と権力――「権力」に憑かれた経済学者の肖像』(佐々木 実、講談社 、2013年5月9日)を読んでみた。たいへんおもしろかった。
下記は、出版社側が書いた宣伝文だ。
経済学者、国会議員、企業経営者の顔を使い分け、“外圧”を利用して郵政民営化など「改革」路線を推し進めた竹中平蔵がつぎに狙うものは!?
8年におよぶ丹念な取材があぶり出す渾身の社会派ノンフィクション。
第12回新潮ドキュメント賞受賞作品――「構造改革」「規制改革」という錦の御旗のもと、いったい何が繰り広げられてきたのか? その中心にはいつも、竹中平蔵というひとりの「経済学者」の存在があった。
“外圧”を使ってこの国を歪めるのは誰か? 郵政民営化など構造改革路線を推し進めた政治家・官僚・学者たちは、日本をどのような国に変えてしまったのか?
8年におよぶ丹念な取材からあぶり出された事実から描ききった、渾身のノンフィクション。
本書に書かれていることだが――、彼はインテレクチュアル・アントレプレナーシップだそうだ。
世の中を動かしていくのは、アントレプレナーシップ(起業家精神)です。そして私たちにいま求められているのは、インテレクチュアル・アントレプレナーシップ、すなわち知的起業家精神です。それにはいろいろな局面がある。
たとえば、東ヨーロッパが社会主義から解放されたときに何が起こったか。アメリカの国際経営コンサルタントと言われる人たちが大量に押しかけて、アメリカ的なビジネスをつくった。これはひとつの知的起業家精神ですよ。ソ連がロシアになったときにも、たとえばワシントンのアーバンインスティチュートという研究所がロシアに進出し、ロシアの都市計画をほとんど手がけた。あるいは、中国で会計基準をつくるときには、アメリカの国際公認会計士が大挙して手伝った。
そして、いまの日本では、政策に関する知的起業家精神が改めて求められている。
自ら解説しているように、小泉政権における竹中のポジションは、東欧の旧社会主義国にビジネスチャンスを求めて押しかけたアメリカの経営コンサルタントとどこか似ていた。抜け目ない知的起業家は「市場化」の伝道師でもある。
『市場と権力』の紹介文が、現代ビジネスにある。まずそれを読んでほしいが、アメリカ取材など丹念に行われた本だが、まだ読んでわからなかったことがいっぱいある。
1 彼はなぜ、慶応大学教授でありながら半年もアメリカの生活ができたのか。
2 他の研究者と共同研究した論文が、彼の名前で単行本となっている事実。なぜ問題にならないのか。
3 リーマンショックで大打撃を受けた世界経済、金融マジック経済の仕掛けをした人物ネットワークと懇意になっていたのに、なぜ彼は批判をまぬがれたのか。
4 なぜ佃島に3カ所の「億ション」を持てたのか。国会でも追及されたようだが、その後は。
5 小泉「郵政改革」の仕掛けを何のためにやったのか。
6 金融改革で問題を起こした人がいるが、なぜ彼は塀の上からなかに落ちなかったのか。
7 いままた安倍内閣の司令塔に座っているのは、マスコミが悪いのか、アメリカが悪いのか、国民が無知なのか。
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