『国・地方自治体の非正規職員』を寄贈されて――「早川征一郎のページ」更新
「自治体職員の33%がいまや非正規雇用。行政サービスの中心業務を担当していても、その年収は200万円以下…? 全国で70万人をこえる非正規雇用はなぜ生まれ、激増したのか。その歴史と実態を明らかにする」と帯に書かれた、早川征一郎・松尾孝一共著『国・地方自治体の非正規職員』(旬報社、2012年12月10日刊)を寄贈された。
さて本書の中身を全部紹介できないが、「はしがき」では次のように課題を設定している。
国・地方自治体における非正規職員の実態について、これをさまざまな側面から解明しようとするのが本書の目的であり、課題でもある。もっと具体的に、本書の課題を掲げると以下のとおりである。
第一に、国・地方自治体の非正規職員とは、法制度的にはどのような存在であり、どのような種類に分かれるか。
第二に、そもそも何故、常勤以外の国・地方公務員が大量に存在するようになったか、その歴史的由来と現状に至る経緯はどうか。
第三に、では、今日、国・地方自治体で、一体どのくらいの人数の非正規職員が存在しているか。
第四に、その仕事の内容および雇用条件、賃金・労働諸条件など処遇の実態はどうか。
第五に、非正規職員の雇用条件や処遇の改善に取り組んでいる公務員関係組合における非正規職員の組織化の現状はどうか。
最後に、国・地方自治体における非正規職員をめぐる諸問題の抜本的解決のために、どのような観点と政策が必要であり、それに沿ってどのような政策提言が可能であるか。
以上が、本書で解明を目指す課題である。
話は飛ぶが、私が住む越谷市は、市長が元社会党県議で自治労出身者、市議会議長(この時点。後に退任)が元組合書記長。
なぜそのようなポジションを得ているのか、新参者としては分からなかったが、障がい者の就労活動に奮闘している「NPO法人 障害者の職場参加をすすめる会」の山下浩志さんのブログ《共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す》を読んで少し分かった。
「越谷市職員組合は大久保製壜や大企業の組合のように既得権益を守るために下層労働者を切り捨てたりはせず、現業差別、下請け差別と闘い続けてきた」と清掃や電話交換手など下請け労働者の組合づくりの話を紹介している。
http://yellow-room.at.webry.info/201211/article_8.html
正規職員中心のユニオンではない、運動をになっているのがわかった。いまはどうなのか?
いま未来をになう新しい連帯・協同の運動をつくるためには「官製ワーキングプア」をなくし、公契約における公正な賃金を保障するとりくみが大事だ(各自治体がすすめている指定管理者制度における低賃金をなくすためにも)。
早川さんの本では、自治労と自治労連の「臨時・非常勤職員組織化方針」にも言及されているので、一読を薦めたい。
著者紹介
早川征一郎(はやかわ・せいいちろう)
法政大学名誉教授。主著に,『公務員の賃金』(旬報社),『公務員の制度と賃金』(大月書店),『国・地方自治体の非常勤職員』(自治体研究社),『国家公務員の昇進・キャリア形成』(日本評論社),『イギリスの炭鉱争議』(御茶の水書房)など。
松尾 孝一(まつお・こういち)
青山学院大学経済学部教授。主著に,『階層化する労働と生活』(日本経済評論社),『ホワイトカラー労働市場と学歴』(学文社),「公務労使関係の変化」久本憲夫編著『労使コミュニケーション』(ミネルヴァ書房),「公務部門改革下の公務労使関係」法政大学大原社研・鈴木玲編『新自由主義と労働』(御茶の水書房)。
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