「日本維新の会」の最低賃金制廃止の「公約」を批判する――小越洋之助のページ更新
総選挙に突入しているが、「最賃制の廃止」が日本維新の会から公約としてアナウンスされた。しかし反論があり、以下のように、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」と書き改められたようだ。
「最賃制廃止」の公約撤回=維新【12衆院選】時事通信 12月4日(火)23時9分配信
日本維新の会が衆院選公約の付属文書「政策実例」で掲げていた「最低賃金制の廃止」を撤回し、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」との表現に変更していたことが4日、分かった。民主党などから「格差拡大路線だ」(野田佳彦首相)と批判されていたことを受け、修正したとみられる。
最賃制度をめぐる文言の修正について、維新の松井一郎幹事長(大阪府知事)は同日夜、大阪市内で記者団に「考えなければいけないということで、問題提起をしている」と語った。
現代労働組合研究会のサイトで何か発信したいと思い、久しぶりに労働関係の原稿を小越洋之助さん(國学院大学名誉教授)にお願いした。
小越洋之助のページ
http://e-kyodo.sakura.ne.jp/ogoshi/ogoshi-index.htm
私の論評:「日本維新の会」の最低賃金制廃止の「公約」を批判する
http://e-kyodo.sakura.ne.jp/ogoshi/ogoshi-ronten1.htm
橋本維新の会にはアメリカ通の竹中平蔵氏(小泉構造改革のイデオローグ)が参加しているが、そのアメリカでも最賃制はある、と小越さんは指摘している。
「かれらはアメリカの市場万能主義の「経済学」のモデルが大好きであるが、そのアメリカでも1938年に連邦法での最賃制が登場し、これまで一回も廃止したことなどない。しかもそのアメリカで規制緩和による格差と貧困が拡大し、近年最賃制の金額を大幅に引き上げているのである。(なお、州によっては連邦法を上回る金額の最賃制もある)」
その上で、「石原慎太郎の支持層は、年収800万円以上の大企業社員、公務員層で、大都市部に蓄積された層だ」という分析が一部にある。高度成長期に大企業や公務職場に就職し、高い年収を得た層が、自らの子弟が「年収300万円以下」で呻吟し、日本社会全体で非正規労働者の増加や年収200万円以下が1000万の労働者がいる現実を見ないで、「ポピュリズムの権威」になぜ、なびくのか。
しかし以下の辞典には、勉強になった。
ポピュリズム【populism】(大辞泉・小学館)
1 《Populism》19世紀末に米国に起こった農民を中心とする社会改革運動。人民党を結成し、政治の民主化や景気対策を要求した。
2 一般に、労働者・貧農・都市中間層などの人民諸階級に対する所得再分配、政治的権利の拡大を唱える主義。
3 大衆に迎合しようとする態度。大衆迎合主義。
小越さんはまた、次のように厳しく批判している。
年収200万円以下という「ワーキングプア」がすでに1千万人を超えているが、その大多数は非正規の人々なのだ。この人々の職場の多くは(ほとんどと言ってもよい)労働組合もないから、会社と団体交渉で賃金を上げる手段もない。だから最低賃金の改定くらいしか期待できない。「維新の会」の「公約」はこの若者たちに「死ね!」と言っているに等しい。
完全雇用が叫ばれ、毎年春闘で賃上げがある社会は、もう過ぎ去り日々だが、果たして志士の会が批判する「日本型社会主義」なのか。
特定の階層だけに賃上げがあり、年収800万円以上の職場で「自己実現」を享受し、他者を蹴落として当然と思う人たちとはちがう、連帯的・協同のネットワークを作り出さなければならない。
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