野田首相の思想と行動・その2――松下政経塾とは―Ⅱ
坂本龍馬の「船中八策」をまねて、最近出された大阪維新の会・「「維新八策」最終案の全文」(日本経済新聞WEB版、2012.09.01)を読んでみた。
衆議院議員数を半数にする、憲法を改正しやすくする、ことなどをうたっている。
http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASHC3103B_R30C12A8000000
下に掲げる「志士の会の『日本プライド構想』には、以下のような十一の政策」(『襤褸の旗――松下政経塾の旗』出井康博著、飛鳥新社、2012年2月)があるが、橋本維新の会の思想とほとんど変わらないことがわかる。
第一策 首相公選制 日本のトップマネージャーは、国民の手で選ぶ
第二策 地域主権 地域主権国家をつくり、地方をイキイキさせる
第三策 安全保障 自国の安全に責任をもち、国際平和を支える国に
第四策 情報公開 「知る権利」に立脚した情報公開の徹底を
第五策 司法改革 時間とお金のかかる裁判をなくす
第六策 税制改革 国民に富を残し、意欲の湧く税制に
第七策 規制撤廃 経済規制を撤廃し、日本経済に活力を
第八策 民営化 民営化を徹底的に進め、国の贅肉をとりのぞく
第九策 社会保障 自助努力を「主」とする、社会保障制度を
第十策 教育改革 百花繚乱の教育化企画で、独創的な子どもを育てる
第十一策 環境保全 環境に責任をもち、人類の未来に貢献する
著者のジャーナリストの出井さんは、《「第一策」の「首相公選制」以外は、総花的でわかりにくい。志士の会が目指す方向を理解するためには、政策の前に書かれた「はじめに」という以下の文章の方が明快だ。》として、下記の文章を引用している。
〈現在の日本は自由主義という仮面をかぶった「社会主義国」といっても過言ではありません。戦後の日本に築き上げられた官僚主導中央集権型システムは、官民を一体化し、敗戦で壊滅的な打撃を受けた日本を、戦後三十年もたたないうちに世界の経済大国にまで成長させました。この事実は賞賛に値するものであり、私たちは先達の努力に心から感謝します。しかし同時に、日本に成功をもたらしたそのシステムこそが、日本を「社会主義国」化し、戦後最大の危機に陥れていることも認識すべきだと訴えます。
(中略)私たちがいま取り組もうとしているのは、日本を仮面をかぶった「社会主義国家」から素顔の「自由主義国家」に改造することであり、日本そして日本人にプライドを取り戻すことです。それはまさに「二十一世紀の維新」とも言える大事業となるでしょう。私たちは、その大事業のブループリントを「日本プライド構想」としてここに提言したいと思います。恐らく多くの人は、私たちのこの提言に反発されることと思います。政治家がこれを唱えたならば、敵を増やし、落選することもあるでしょう。
それでも私たちは提言します。それが日本を救う道だと信じているからです。そして、いま反発をもつ人にも、いずれは、賛同いただけると信じているからです。〉(同書、p96)
昔、「日本は私たちの目標とする社会主義国だ」と書いた中国の研究機関があったことを記憶している。中国の権力集団が目標とするのが日本で、日本の権力をめざした人たちが「離脱」をかかげる、不思議な関係だ。
話を戻して、大阪維新の会の目標と、野田首相の思想が一致しているのは、志士の会のメンバーが橋下次期首相候補のブレーンとして参加しているからだ。
そのメンバー表は、下記の通り。
《中心メンバーは、日本新党初当選組の野田佳彦、山田宏、長浜博行である。(中略)他のメンバーは、鈴木康友(一期、浜松市長)、海老根靖典(二期、藤沢市長)、河井淳一(二期、首相政務秘書官)、小田全宏(四期、NPO法人「日本政策フロンティア」理事長)、勝又恒一郎(八期、民主党衆院議員)、市村浩一郎(九期、民主党衆院議員)、中田宏(十期、前・横浜市長)など。さらに塾以外から、日本新党当選組の河村たかし(現・名古屋市長〉や中村時広(現・愛媛県知事)なども加わって、総勢十数名で構成された。》
1997年ごろのメンバーだが、そのなかの山田宏、中田宏の両メンバーは、最近、日本創新党を解散し、日本維新の会から衆議院に立候補すると報道されている。
野田首相が「民主党のマニフェスト」にはなかった消費税増税やTPPを推進しているのは、「エリート官僚政治からの離脱」をかかげた民主党を内部から食いちぎり(官僚主導中央集中型システムの離脱を言葉で言いながら)、「志士の会」が掲げた政治戦略を広げているからだ。
このような「くらしやふくし充実の側」にたつ政治から自己中心の政治を実行する姿は、労働組合を内部から食いちぎり、企業の経営権を乗っ取ったインフォーマル組織の手法と同じだと思う。
反権威主義でもういちど、企業と労働組合、自治体・政党の姿を見直したいものだ。
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