無料ブログはココログ

« 青木慧さんの『ニッポン丸はどこへ行く』――インフォーマル組織物語Ⅵ | トップページ | NPOひかりの森が開催する講演会と点字教室のお知らせ »

2012年9月30日 (日)

『ニッポン丸はどこへ行く』が解明したこと――インフォーマル組織物語Ⅵ-2

 この本が出版されたのは、奥付には1982年12月とある。

その帯には“官民・労使が一体の国 「日本的経営」の実態を描き、戦線統一でゆれる労働運動内外の動きを深層からとらえる、戦慄のルポルタージュ。……。”(朝日新聞社)と記されていた。

 

 
  120930aokisatosi540

 以下に目次を掲載しておく。

 はじめに

第一章 政労使トリオで《産業平和》

 政府・自民党の労働組合運動は?/《自由にして民主的な》政党と労組/政労使《参加と合意》の非公式国会

第二章 非同調者を締め出す企業内暴力

 あいつとは口をきくな、挨拶するな/共産党員なんて人間じゃないんだ/背後から刃物、稀硫酸、有毒液/加害者は出世、置き土産のリンチ

第三章《労使双方の御相談役》労務屋

 三枚看板、四枚看板を使い分けて/秘密研修で秘密中核リーダー育成/組合内秘穂組織で執行部乗っ取り

第四章《クーデター》で偽装労組に

  雪印食品DEC組合の千人切り作戦/昭和電工労使の昭和高分子への攻略/鉄鋼連絡会議の日本ステンレス攻略

第五章復権する帝国日本丸の諸勢力

  《労資一体》産業報国会の組合移行/GHQの《日本労働組合反共計画》/職場警察組織と小集団自主管理運動/労組への《危険な反動グループ》の影響

第六章日米・官民・労使で《組合民主化》

  日米安保体制下の日本と労働界/生産性向上運動と労使協議制の普及/総評・中立労連内の《民主化》組織/JCと統一先行の《研究教育機関》

第七章政労使トリオの新権力と抵抗

  日本丸の権力構造と生産現場の権力/抵抗の組織と乗組員の《主体》性

おわりに

 

本書の一部分の情報提供に参加したが、いま私が追っかけている「インフォーマル組織」については、第2章、第3章、第4章に書かれている事実だ。

 『朝日ジャーナル』(1983年9月16日号)で下山房雄さんは、美化されてきた「日本的労使関係」のそのものには「深い暗黒の領域」ある(当時著名な経営学者の言葉)を引用して、本書を書評している。

  「下山房雄のページ」に掲載。

 青木慧の七冊めのルボとして昨年末に出てから話題を呼び、社会運動の複数の潮流のもとで評価されるに至った本書は民間大企業の労資関係に存する「暗黒の領域」を日産自動車・雪印食品・昭和電工・日本ステンレスなどでのおぞましい「集団主義」の実践の姿を通してズパリ描き、しかもこの「暗黒の領域」の育成・発展が個別企業をこえた一種の社会的な運動として、つまり「ニッポン丸」の舵取り的ポジションから行われてきたことを、豊富な事実と貴重な聞き取りによって描いている。

今崎暁巳や鎌田慧など青木と並んで日本の労資関係の暗部を対象としてきたルポライターの中での青木の特徴は、彼の前著『青い鳥はどこへ』(労働旬報杜)への私の以下のコメントで示されよう。

――ナチズムや日本軍国主義のもとで、多くの善良な父や夫たちが狂気の暴力行為に駆られていったのは半世紀も前のことではない。今日世界中の資本家のみならず中ソの為政者からも羨望の熱い目をそそがれている日本企業の高い生産力とそれを支える日本的労資関係がその種のファッショ的暴力行為によって維持されているありさまを鮮烈に描いたルボである。取材の対象を加害者の側にも求めその論理と生態を抵抗者のそれと交錯させ展開している点が出色である。

 

その前後は、下山さんが語る「ニッポン丸」の舵取り的ポジション――「自民党や生産性本部、全国的な人脈・ネットワーク、労働戦線統一を狙う労働界」の分析だ。

朝日新聞出版局の若き編集者の企画の狙い――「日本的経営」「企業社会ニッポン」の解明は、十分展開されていた。

 


 青木さんは、21世紀の現代を見通していたかのように、同書の中にこう書いている。

 現在の日本丸の権力と構造にみる新しい変化は、まさに労働界の新しい「権力」が、政府・自民党、官僚機構、財界といった、この国の本物の権力と結合しているところにある。本物の権力も、新しい「権力」をも自らの側に組み込むことでその権力を維持し、また新しい「権力」も、育ての《親》の《子》となって権力に組み込まれることによって、自らの「権力」を強化し、維持しようとしている(同署258ページ)。

 

  どうだろう。

 話は飛ぶが、今の政治・労働体制の一体化の姿は、連合会長の古賀伸明はナショナル労組のリーダー、主な労組幹部出身者では、▼直嶋正行(自動車総連)、▼平野博文(電機労連)松下電器産業(現パナソニック)労組、▼川端達夫(UIゼンセン)、▼輿石東(日教組)、▼城島光力(味の素労組委員長)などがいる。

そのうえ民主党の野田総理は松下政経塾出身だ。この松下政経塾プラス連合系出身幹部の合体が、現代のインフォーマル組織の「フォーマル組織」版だと思う。これはのちほど書いてみたい。

   

  ▽追記〔2012.11.18 ()

 

  野田首相の思想と行動――松下政経塾とは―Ⅰ

 

  http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-3f19.html

 

  ▽追記〔2012.11.21 ()

 

  野田首相の思想と行動・その2――松下政経塾とは―Ⅱ

 

  http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-4707.html

 

 

 

 

青木慧さんは、2008年8月12日、多数の本を書き、ジャーナリストの農民版・山猿塾をおこし、旅立っていった。

http://kyotofu-seikyoren.com/publicity/message/003374.php

 

 論敵・塩路一郎は最近、『日産自動車の盛衰―自動車労連会長の証言』(緑風出版、2012/8/22)を出している。こちらは未読だが、事実なので告知しておく。

 http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-1214-1n.html

 

  

 

« 青木慧さんの『ニッポン丸はどこへ行く』――インフォーマル組織物語Ⅵ | トップページ | NPOひかりの森が開催する講演会と点字教室のお知らせ »

インフォーマル組織の過去・未来」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/567039/55782528

この記事へのトラックバック一覧です: 『ニッポン丸はどこへ行く』が解明したこと――インフォーマル組織物語Ⅵ-2:

« 青木慧さんの『ニッポン丸はどこへ行く』――インフォーマル組織物語Ⅵ | トップページ | NPOひかりの森が開催する講演会と点字教室のお知らせ »