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2011年8月30日 (火)

変わる高齢協・進むふくし生協――ふくし生協(福岡) 

 

 以下の文は、HP:「編集者の飛礫」(「福祉生協さいたまだより」(2011年7月号、生協 さいたま高齢協)にも掲載したが、ブログの反響が大きいのでここに再掲載します。                  

 

 全国の高齢協ができて10数年。日本高齢者生協連合会第10回総会(6月5日)が東京のラパスホール(大塚)で開かれた。今総会から、福祉生協さいたま(生協 さいたま高齢協)も正式に参加した。全国の胎動している事実を学びながら、“協同のうねりの情報”を組合員・市民のみなさんと共有して、埼玉でも生み出していこうという思いを伝えていきたい。 

                                                             

 

▽高齢協のイメージが変わり

  始めている

 

 全国の高齢協総会報告書にある各地の取り組みは、これまでの「高齢者への訪問介護の取り組み」中心という高齢協の組織イメージを、大幅に変えて見ざるを得ない事実の発見があった。

 

 目次風に書き込むと――「コミュニティケアの推進」「小規模・多機能なデイサービスプラス宅老所を」「ケアホーム(共同生活介護)をつくりだす」「入居しやすい高齢者専用住宅づくり」「就労支援のための事業」「高齢者と障がい者を支えるモデル地域にしよう」「子育て安心サポートづくり」などである。

 

 これらは私が協同総合研究所の主任研究員・菅野正純さんと一緒に編集した『仕事の発見』(隔月刊誌・日本労協連発行)の大テーマ――人間再生・地域再生・地域コミュニティーの再生・福祉社会の創造・協同労働論というテーマの実践版だ。

 

 菅野さんは夭折してしまったが、「高齢者が元気に生きられるまちは、障害者も生きられるまちだ」とネットワーク型・複合型の問題をいつも提起していた。やっと彼の問題提起が、甦ってきたと実感している。

 これら子ども、若者、障がい者支援などは、どの地域(都会であろうとローカルなところであろうと)の高齢者でも頑張れるテーマだ。

 

 さらに総会に参加している構成員は、10年前に見られなかった、若い女性から青年も含む中堅男性陣の新鮮な顔ぶれがあった。

 

 ▽民家改造型デイサービスを

  基軸に「ふくし生協」を

 

 私たちは、メディアワーカーズ・ジャパン(伊藤宏一代表)が制作した、ふくし生協(福岡)の紹介ビデオ((「心と心のつながりで ふくし生協と生きる」、1330秒)からいくつかの事実を学んだ。

 

 福岡では、7~8年ほど前から、それまでの高齢者向けの弁当の宅配事業・訪問介護中心型事業から現在15カ所の「民家を改造して、小規模・多機能なデイサービスプラス宅老所」があり、6カ所の事業所が短期宿泊を行っている。

 

 すべてが民家活用型の事業所で、その多くは組合員が提供したものである。

 

 日本高齢者生協連合会の坂林哲雄専務は「在宅での暮らしを支援するために、単なるデイサービスに留まらず、家族や本人の状況に応じて泊まりを実施しています。制度の不十分な点を補う活動が定着し

 

、利用が増え、ニーズに応えるために、通所や宿泊スペースの拡大を余儀なくされているという状況です」と日本高齢者生協連合会のHP上にレポートしている。その1カ所・けいちく事業所/ほのぼの村。

 

 レポートをそのまま紹介する。

 “福岡高齢協の中で、宅老所という形を積極的に取り入れた最初の事業所です。通所・居宅介護・訪問の事業を行っています。通所事業は、利用者の増加に伴い、「第3ほのぼの」を昨年開所し、合計の通所定員は51名となっています。しかし、利用契約者は65名(内予防給付は8名)です。毎日のように利用する人が多数を占めているということです。どんな状況の利用者も断らないで取り組んだ結果です。毎日24人から30名の方が宿泊しています。

 

 「第1ほのぼの」は普通の民家を改修したものです。その利用が急増し、隣接地を買収して造ったのが「第2ほのぼの」です。木をふんだんに使った建築で、温かみを感じる建物です。

 この建設に必要な1・2億円の投資をめぐって、相当白熱した議論が理事会でもあったそうです。結果は「第3ほのぼの」の建設からも明確で、利用は今後も増え続けるでしょう。

 職員層は30代~40代が主力で、子育て中の職員も多く、子どもたちも利用する場所になっています。中には、デイの仕事にボランティアとして関わっている子もいるようです。 保育園の送迎車もやってくるということでした。職員の子育ても一緒にできる仕事ぶりは、地域に密着した高齢協の介護福祉に相応しいという感じでした”

 

 

 

 ▽障がい者のケアホーム

  (共同生活介護)づくりも

 

 注目したいのは、障がい者の生活支援も並行して行っていることである。坂林さんのレポートにある「ひまわり福祉サービス」の事例紹介をここで引用したい。

 

 「居宅介護と訪問の事務所があり、同時に障害者の方が利用するケアホームがありました。ケアホーム(共同生活介護)は主として夜間の生活を援助する自立支援法にある仕組みで、この2月1日にオープンしたばかりです。

 

 現在お試しを含めて5、6人が共同生活を行っているということでした。部屋を見せてもらいましたが、それぞれ自分の好きなものを持ち込み、個性のある部屋になっていました。このケアホームの建設に5600万円が投資されました。その多くを、障害者を抱える家族が拠出(出資)しています。子どもたちの将来のケアを含めた安心を高齢協に託したということです」

 

 “まじりあいの福祉”を実行している事実は、まったくすごい。

 

 ▽日本最大のふくし生協(福岡)

 

 “ふくし生協(福岡県高齢者福祉生協)”は、組合員数6000名余、ワーカーズ600名超、出資金は1億6000万円(もう少し増えているはず)、年間事業高・供給高が約12億円と大躍進している。

 

 福岡は、1995年に設立され、1999年に生協法人の認可を受け、全国とは歴史的には変わらない。

 現在、粕屋老人給食センターを含めて地域福祉事業所が16カ所あり、ケアプラン、訪問介護、訪問看護、障がい者支援センター、デイサービス、小規模多機能ホーム、短期宿泊、弁当配食、ふくし相談、生協サービスの事業を行っている。

 

 以下の点も、勉強したい。

 1 全日自労の歴史、そして生協陣営との関係から、なぜワーカーズ主体の「ふくし生協」になったのか。

 2 これまで高齢者の「福祉」「いきがい」「仕事おこし」をめざしていた組織が、どのような議論と実践の中から「ふくし生協」へと複合的に発展したのか。

 3 ヘルパー養成講座を開始し訪問介護という仕事おこしの場面から「民家改造型、デイサービスプラス泊まりもできる宅老所づくり」に変換した要因は何か。

 4 15カ所も(これからもっと広げるため)の「地域コミュニティづくり」の具体的な実践。組合員提供の住宅をはじめ資金作りの方法など。

 5 「地域共同体」の残るローカルだからできたのか? 東京や埼玉など都市部における“ふくし戦略”はどう形成したらいいのか。

 このような事業がなぜ福岡ではできたのか――人材と地域の社会的ニーズの発掘、そして臨機応変なリーダーづくり、それを生みだす風土とサブカルチャー(たとえば宅老所で著名な“よりあい”などの文化)など盛りだくさんのことを知りたくなった。

 

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