今崎暁巳さんのルポ論が残したもの――プロレタリア文学のルポ論を継承するために
2011年7月8日(金)、「今崎暁巳さんを偲ぶ会」を準備したメンバーのご苦労さん会があり、日フィルや沖電気争議団、雪印乳業、商社9条の会、元生協マン、元出版社、元共同映画、元衆議院議員、そして元労働旬報社社長の柳澤明朗さんなどが参集してその思いと思い出を語り合った。
その場で、私は「今崎暁巳さんは1980年代に現代ルポ論と戦前のプロレタリア文学のルポ論をそれぞれ2本、計4本の原稿を書いていた。ぜひ、次の世代に読んで欲しい」と話した。
ルポルタージュ・ノート、「民主文学」、p142―150、1980年6月
ルポルタージュ集1 解説・今崎暁巳、「日本プロレタリア文学集33」(新日本出版社、1988年9月)
ルポルタージュ集2 解説・今崎暁巳、「日本プロレタリア文学集34」(新日本出版社、1988年10月)
ルポルタージュの今日的課題―取材現場に思うこと、「民主文学」、p172―181、1988年10月
その思いは、2008年に、小説『蟹工船』が文庫版・マンガ版などの総計で80万部に迫るベストセラーになり、ブームを起こした。
その背景に、フリーター、日雇派遣、ネットカフェ難民など非正規労働者・契約社員など不安定な青年労働者の大量に生みだされ、社会の底辺からあっという間に、大企業社会、公務職場、医療などの職場にまん延し、多くの青年たちは貧困と不安定化し、そして社会事件の多発化があった。
しかし、最近、インターネット上の投稿に“ちょっと前にプロレタリア文学というか『蟹工船』ブームが起きたとき、あれって結局『蟹工船』しか流行らなかったのかな?”という疑問が上がっている。
作家雨宮処凛さんなどの奮闘もあるが、どうも事実である。
今崎さんの「プロレタリア文学・ルポ論」は、「女工哀史」などの労働問題の発生や戦前の社会・労働論、闘争史をまとめて解説してある。なかには、東京下町の風景、託児所づくりもフォローしている。
ならば、急がば回れではないが、やっぱり大学生や労働者(これが一番難しいか)に、「労働経済学」ではなく、明治時代からの「労働問題」「社会政策」「労働運動史」を教授する、ルネッサンス(再生)がもとめられているのではないか。いま、大学が問われている!
その一環として、今崎さんの「戦前のルポ論」を読んでほしいと思った次第。
そのうえで「戦後史の中のルポ論」を書く研究者・実践家が出てこないと、「WINDOWS95」以前の労働社会・民衆社会は、歴史的にも拡散・終焉するのではないか(電子図書づくりの進展もあり、民衆の側にツールはできてきており、大学の紀要などに少しずつ、若手研究者の努力が始まっているが、まだまだ少ない。これらの動向の一端もいつかレポートしたい)。
「今崎暁巳さんを偲ぶ会」事務局・飯島信吾
▽追記:2013.12.08
今崎暁巳さんが書いていたルポ論のメッセージ
http://okina1.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-dbf0.html
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